11第1章Fontan循環の基礎 Fontan手術の適応となる疾患群は,基本的に2心室手術が実行不可能な機能的単心室血行動態の疾患である.単心室(single ventricle:SV)〔内臓錯位を含む〕,三尖弁閉鎖(tricuspid atresia:TA),肺動脈閉鎖(pulmonary afresia:PA),左心低形成症候群(hypoplastic left syndrome:HLHS)および類縁疾患,重症Ebstein病(critical Ebstein anomaly),左右心室不均衡が著しい房室中隔欠損,心内導管の設置が困難な遠隔型の両大血管右室起始,閉鎖が困難な筋性部心室中隔欠損,体心室房室弁の跨乗(stradding)を伴う症例,などが対象となる.本項では代表的な疾患について,概念,解剖・分類,病態,Fontan手術に至るまでの臨床所見,治療について簡潔に記述する.各疾患の小児期の診断と治療に関する詳細は,小児循環器学の成書1~3)および診療ガイドライン4)を参考にされたい.三尖弁閉鎖概念 原始心臓管が右方へルーピングした後,房室管口(共通房室口)が心室中隔を越えて右側へ移動する過程,または三尖弁の形成過程が障害された結果,三尖弁が筋性(70%)もしくは膜性(30%)に閉鎖する疾患である.左心室が機能的単心室となる.先天性心疾患の1~2%を占める.解剖・分類 以下に分類される(図1).①I型(70~80%,正常大血管位置関係:大動脈は左心室より起始;図1A):Ia;肺動脈閉鎖,Ib;肺動脈狭窄,Ic;肺動脈狭窄を伴わない.②II型(15~20%,D型大血管転位:大動脈は低形成の右心室より起始;図1B):IIa;肺動脈閉鎖,12第1章 Fontan循環の基礎2Fontan手術の適応疾患基礎疾患とその解剖・血行動態b三尖弁閉鎖A:Ib型,B:IIb型大動脈肺動脈左室右室大動脈肺動脈左室右室AB図1
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