2437症例でわかる小児神経疾患の遺伝学的アプローチ
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68各 論1Down症候群の家族歴のある新生男児各 論症  例 日齢3の男児家 族 歴 父27歳,母24歳.経妊0経産0.母方弟(Ⅱ-4)がDown症候群(図1).現 病 歴 在胎39週0日に,産科クリニックで出生した.体重は2,900 g,Apgarスコアは8/9であった.出生後すぐに啼泣するも,やや弱々しかった.母乳の哺乳が進まず,人工乳首を咥えさせても15分かけて10 cc程度飲むとそのまま寝てしまった.3日経っても寝ていることが多いため,主治医より紹介され,新生児科に入院した.入院時には父親と父方祖父母が児に付き添ってきた.現  症 仰臥位でfrog-leg positionを示し,両腋で抱き上げると肩が抜けそうになる.顔貌は新生児特有のむくみのためはっきりしないが,眼尻が釣りあがって見える.眼は離れていて,眼と眼の間は平坦である.大泉門は3 cm×3 cmとやや開大しているも平坦.後頭部には小泉門と思われる骨の解離が触知された.単一屈曲線が右手掌にのみ認められた.心雑音は聴取せず.やや多呼吸であるが呼吸音は清明であった.便の排泄は良好.経  過 入院後も哺乳は上手にならないため,毎日面会に来ていた父親に事情を説明して,一時的に経管栄養を開始した.生後5日目に産科クリニックを退院した母親が面会に来るようになった.子どもがすやすや眠っている様子を見て,母親は安心している様子であった.その後,児は次第に経口摂取がうまくできるようになったため,退院して外来で引き続き母親に継続的に授乳の指導をする見通しとなった.Point❶考えられる疾患とその遺伝形式,次子の発症リスクはどのように考えられるか?❷本例に選択すべき検査方法はG-band法,FISH法,MLPA法,マイクロアレイ染色体検査のいずれが適切か?  またその理由は?❸検査を行うにあたっての注意点は?Ⅰ123127y24y42143ⅡⅢP図1 家系図発端者(Ⅲ-1)の母(Ⅱ-3)には,Down症候群と診断されている弟(Ⅱ-4)がいる.

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