2437症例でわかる小児神経疾患の遺伝学的アプローチ
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712 発達相談で受診した斜めの線が引けない5歳女児2発達相談で受診した斜めの線が引けない5歳女児各 論Point❶考えられる疾患は何か?❷診断確定のための検査は?❸本症の成人期の管理で重要なことは何か?症  例 5歳11か月女児主  訴 発達相談家 族 歴 父親38歳,母親36歳,兄8歳で健康(図1).周産期歴 妊娠中の経過に特記すべき事項なし.在胎40週,頭位普通分娩,2,885 gにて出生.仮死なし.既 往 歴 生直後より心雑音あり,心臓超音波検査にて末梢性肺動脈狭窄を指摘.2歳まで定期診察されていたが,その後自然軽快したためフォロー中止となっている.発 達 歴 頚定3か月,寝返り8か月,座位7~8か月,つかまり立ち1歳,つたい歩き1歳5か月,独歩3歳4か月.母親によれば足関節が柔らかく歩行が安定しなかった.2歳時に有意語なし.3歳で喃語,3歳2か月で単語数語,その後言葉は増えよく喋るようになった.乳児期より音に敏感で,物音で泣いて寝つかず.現在も雷やベルの音で耳を塞ぐ.現 病 歴 保育園は通常保育で現在年中組に在籍.喜んで通い複数の友達と交わって遊ぶ.多動,他害,自傷,癇癪,常同行動は見受けられず,保育園では特に手のかかる子どもではない.しかし先生の話が理解できないことが多く,指示を受けてもどう行動してよいかわからず,周囲の子どもの動きをみて真似をすることが多い.母親が今後の就学のことを心配し,発達相談目的で受診.現  症 体格中等度,頭囲正常,濃い眉毛,厚ぼったい眼瞼,鼻根部平低,上向きの鼻孔,長い人中,口唇は厚く口を開けていることが多い.会話は成立し質問に答えてよく喋る.表情は豊かで人懐っこい印象を与える.平仮名は大体読め,自分の名前の字は書ける.10まで数える.絵を描かせると斜めの線が引けない(図2).検  査 その後,11歳時に心理検査(WISC-Ⅳ)を施行し,以下の結果を得た.FSIQ(総IQ)54,VCI(言語理解)74,PRI(知覚推理)58,WMI(ワーキングメモリー)60,PSI(処理速度)58.11238 y8 y5 y36 y2ⅠⅡP図1 家系図見本患児の模写描けず図2 図形の模写患児に見本を提示し,見ながら模写してもらった.角,円,縦横の交差は模写できるが,斜めの線が引けない.

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