2439臨床医必読 最新IgG4関連疾患 改訂第2版
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192 血清IgG4高値はIgG4関連疾患(IgG4—related disease:IgG4—RD)の非常に重要な所見ではあるが,IgG4—RDに対する特異度は高くなく,本疾患以外の様々な疾患でも高値となることが知られている1,2).また,罹患臓器への多数のIgG4陽性形質細胞(IgG4—positive plasma cell:IgG4+PC)浸潤は,診断のうえで最も重要な所見と考えられてきたが,こちらも様々な炎症疾患で認められることがあり,必ずしもIgG4—RDに特異的ではないことが明らかとなってきた3).診断を疑う臨床所見として高γグロブリン血症があるが,この所見は,Sjögren症候群をはじめ多くの自己免疫疾患に共通する検査所見である.したがって,どのような臨床所見がある場合にIgG4—RDを疑い,どのタイミングで血清IgG4を測定するかが重要となる.本項では,IgG4—RDと鑑別すべき疾患のうち,リウマチ・膠原病疾患とリンパ節疾患について解説する.1.鑑別すべきリウマチ・膠原病疾患1)Sjögren症候群 IgG4—RDの涙腺・唾液腺病変は,以前はMikulicz病とよばれ,長い間,Sjögren症候群の一亜型として分類されてきた.しかし,IgG4関連涙腺炎や唾液腺炎の患者では,抗SS—A/Ro抗体(SS—A)や抗SS—B/La抗体(SS—B)はSjögren症候群の合併という特殊な場合を除いて陰性であり,臨床経過も明らかに異なる(表1)4).特に,腺腫脹の期間と部位は重要である.IgG4関連涙腺・唾液腺炎は数か月にわたって腫脹が持続し無痛性で主に顎下腺を対称性に侵す.一方で,Sjögren症候群の場合は有痛性で片側性のことが多く,耳下腺が主に侵され腫脹している期間は短い.このような違いがあるにもかかわらず,50年以上にわたってほとんどの膠原病専門医が騙されていたという事実は,われわれ臨床医が深く反省すべき点である.2005年,生検組織のIgG4免疫染色により,これらの2疾患は,明らかに異なる疾患であることが証明され,IgG4関連涙腺・唾液腺炎(旧Mikulicz病の新しい呼称)という新たな疾患概念が確立された5).幸いなことに,IgG4—RDにおいてSS—AやSS—Bが陽性になることは非常にまれであり,これらが陽性であれば診断に迷うことはほとんどない.逆に,SS—A/SS—B陰性のSjögren症候群では,血清IgG4を測定するなどの注意が必要である.近年,超音波検査が鑑別に有用であることが明らかとなった6).IgG4関連唾液腺炎では結節状/石垣状もしくは網状の特徴的な超音波所見を呈するが,このような所見はSjögren症候群では認められず,両者の鑑別点となる.Sjögren症候群では,口唇小唾液腺生検組織にIgG4陽性形質細胞浸潤はほとんど認められないので,この点も重要な鑑別となる.Sjögren症候群の乾燥症状に対して,ステロイドは治療効果に乏しいが,IgG4関連涙腺・唾液腺炎は,ステロイドが著効する疾患であり,治療により乾燥所見は著明に改善する.2)ANCA関連血管炎 ANCA関連血管炎は,組織のIgG4免疫染色が診断を混乱させる可能性のある重要なリウマチ性疾患である.中でも注意が必要な疾患は,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granuloma-tosis with polyangiitis:EGPA)である7,8)(図1).EGPAは,以前にはChurg—Strauss症候群とよばれていた.血液検査では好酸球増加や血清IgE高値などのIgG4—RDと共通した所見を呈する.さらに,高IgG4血症を認めることも多い.Yama-motoらは,80%の症例で血清IgG4高値であったと報告した7).EGPAでは,IgG4—RD同様に気管支喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患リウマチ・膠原病疾患,リンパ節疾患2Ⅲ IgG4関連疾患の鑑別

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