118はじめに1脳主幹動脈閉塞(large vessel occlusion:LVO)による急性期脳梗塞に対する機械的血栓回収療法(mechanical thrombectomy:MT)は,発症から治療開始までの時間短縮が転帰改善に繋がることが明らかとなっている1).また,発症/最終健常確認時刻から時間が経過した症例においても,画像診断から再灌流までの時間が転帰に関連することが示唆されている.したがって,来院後に速やかに画像診断を行って治療適応を決定する必要があることはいうまでもない.しかしながら,画像診断に要する時間と情報量にはtrade-offの関係が存在するため,症例毎に検討する必要がある.発症6時間以内の重症例2発症早期のLVO例で神経症状が重度(NI-HSS≧6)であれば,MT開始までの時間短縮が最優先される.広範囲虚血病変を有する場合には,未だMTの有効性は証明されておらず,現在RESCUE-LIMIT(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03702413)などのランダム化比較試験が進行中であるが,発症6時間以内のICA/M1閉塞例では,虚血範囲が広くてもMTにより早期に再還流が得られれば機能改善が得られる可能性がある2,3).したがって,急性期画像診断に要する時間を可能な限り短縮することが重要である.CT,CTA1各施設の診療体制にも依存するが,現時点では単純CTとCTAによる画像診断が最も必要かつ十分な画像診断の選択と適応判断とは─時短優先vs安全優先II 再開通療法-より広く,より早く,より確実に,D2Pを短くするためになすべきことA.画像診断,セットアップ1国立病院機構大阪医療センター脳卒中内科 山上 宏 ◉主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞に対する機械的血栓回収療法では,来院後に速やかに画像診断を行って治療適応を決定する必要がある. ◉発症6時間以内の重症例では,治療開始までの時間短縮が最優先されるため,施設の状況に応じてあらかじめ画像検査の手順を決めておくことが望ましい. ◉発症または最終健常確認時刻から6時間以降の重症例では,静注血栓溶解療法の適応決定を含め,頭部MRIとMRAによる画像診断が必要である. ◉神経症状が軽症の主幹動脈閉塞例では,多少の時間を要しても灌流画像まで撮像し,安全に治療が行えるよう慎重に適応を判断すべきである.ssential PointE
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