読み解くためのKeyword35解答第2章 運動障害性構音障害の基礎混合性構音障害 2つ以上の運動障害性構音障害のタイプが混在しているものを混合性構音障害と呼ぶ2)。症状は障害の混在によって異なる。原因疾患には筋萎縮性側索硬化症(痙性構音障害─弛緩性構音障害),多発性硬化症(浮動),ウィルソン病(痙性構音障害─失調性構音障害─運動低下性構音障害)などがある。筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS) 上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが障害される。下位運動ニューロン障害として筋力低下,筋萎縮,筋線維束性攣縮,上位運動ニューロン障害として病的反射の出現など錐体路症状が認められる。ALSでは以下の陰性徴候がよく知られる1)。①感覚障害(が出現しない)②褥瘡(になりにくい)③膀胱直腸障害(排泄に必要な膀胱,直腸の筋肉はALSによって侵されない)④眼球運動障害:眼球の運動に必要な筋肉は侵されにくい 多くははじめに,鼻咽腔閉鎖不全と舌の運動麻痺が出現し3),嗄声を認める。構音筋に筋萎縮が起こり,筋線維束性攣縮を伴う3,4)。筋力低下,運動速度の低下,運動範囲が制限される3)。やがてすべての器官が障害されて発話が不可能になる。拡大・代替コミュニケーション(augmentative and alternative communication:AAC)を適宜導入しながらコミュニケーション意欲を維持することが重要である。多発性硬化症(multiple sclerosis:MS) 中枢神経系の髄鞘(オリゴデンドログリア)が選択的に破壊される炎症性の脱髄疾患1)で自己免疫的な機序が発症にかかわるといわれている1)。欧米に多く,アジアやアフリカでは比較的少ない。白質に新旧の脱髄斑がみられ,古い脱髄斑は硬化している。20~30歳代で発症する人が多く,女性が多い。症状の寛解と再発を繰り返しながら徐々に進行する1)。錐体路に脱髄が起これば錐体路障害を主体とする運動麻痺(単麻痺,対麻痺,片麻痺)5),小脳や小脳路に脱髄が起これば失調症状が出現する。急激な視力低下や中心暗転(視野の中心が見えない視野障害)で初発することが多い。眼振や複視・眼球運動障害があらわれる。感覚異常や排尿障害がみられる。有痛性強直性けいれんがある。入浴や運動などによって体温が上昇した時に神経症状が悪化するウートフ(Uhtho)徴候がみられるため,環境やプログラムに留意する。構音障害は障害の経路に影響を受ける3)。ウィルソン病(Wilson disease:WD) 肝臓や脳など全身の臓器に銅が蓄積して,障害を来す疾患で常染色体劣性遺伝である。適切な治療(薬物療法と食事制限)を早期から受けることが必要である。症状はさまざまで,肝硬変を伴う肝障害の他,種々の神経障害を来す4)。筋緊張亢進,筋固縮,振戦,失調を基調とした運動障害が出現し3,4),運動低下性構音障害,失調性構音障害,痙性構音障害などの特徴が混在する可能性がある3,4)。1①2つ,②痙性,③失調性,④運動低下性2⑤上位,⑥下位,⑦低下,⑧萎縮,⑨錐体路,⑩感覚,⑪膀胱直腸(⑩,⑪は順不同),⑫眼球3⑬中枢,⑭自己免疫,⑮欧米,⑯硬,⑰寛解,⑱女4⑲銅,⑳常,㉑劣,㉒亢進,㉓固縮
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