2454不安とうつの統一プロトコル 診断を越えた認知行動療法 臨床応用編
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17診断横断アセスメントと事例概念化第2章が多い(例:Varela et al., 2004)。また,ある行動がどの程度適応的であるかを評価する際にも,文化的側面を考慮することは重要である。たとえば,社交不安に苦しむ患者は,アサーティブでいることに困難を覚えることが多いため,アサーティブな振る舞いをするという曝露課題に取り組むことがある。このとき,患者が呈している症状だけではなく,アサーティブな振る舞いには文化差があることも考慮に入れる。具体的には,集団主義的価値観の強い文化にある患者は,ヨーロッパ系アメリカ人から見ればアサーティブではない行動をとる傾向があるかもしれない。そして,その傾向は社交不安とは無関係のこともあれば,すでに患っている社交不安を悪化させることもあるだろう。このように,社会文化的な要因は,その文化的文脈のなかで最も適当な「代替行動」とは何かということに関係する。異なる文化的背景をもつ患者へのUPの適用については,第16章でさらに詳しく扱う。感情体験に対する嫌悪反応の例感情を喚起させる出来事嫌悪反応関連する障害混雑した電車に乗ったときに,心臓の鼓動が激しくなる「これ以上鼓動が激しくなったら,電車を降りなければならなくなる」「パニック発作を起こすなんて/いまだにこの恐怖を克服していないなんて,私は弱い人間だ」パニック症「生まれたばかりの娘に危害を加える」という侵入思考が生じる「こんなことを考えるのは,化け物くらいだ」「私はひどい親だ」「夫にはこんなこと絶対に言えない」強迫症スピーチをする前に強い不安感に襲われる「緊張しているのがみんなにばれてしまう」「こんな簡単な発表すら落ち着いてこなせないなら,昇進なんてありえない」社交不安症初デートのあとで,その後の進展を想像し,ドキドキする「期待をもつべきじゃない。どうせ,うまくいかないんだから」ばつの悪い瞬間を思い出す「もしまたあんなことがあったら,恥ずかしくてとても生きていけない」「あのことを考えるだけで嫌になる」ふさいだ気分で目覚める「こんな気分じゃ今日はもう台無しだ」「大した問題があるわけでもないのに,こんな気分になるなんて私は本当に感謝が足りない」「最高の気分じゃないなんて嫌だ」抑うつ障害試験前に不安になる「心配がおさまらなかったら,試験に集中できなくて,ひどい成績を取ってしまう」「どうして私はこんなに小さなことが気になる性格なんだろう」全般不安症飛行機が墜落するのではないかと心配になる「私は本当にばかだ。飛行機の墜落事故がめったに起きないことくらい誰でも知ってるのに」「墜落のことは考えちゃだめだ。本当に墜落してしまう。」限局性恐怖症*パートナーに見捨てられるのではないかと心配になる「一人では生きていけない」境界性パーソナリティ障害犬が物を壊して,カッとなる芝居の役を得たときに,誇らしい気持ちになるパートナーと別れることになり,悲しみに暮れる「これがただのアクシデントだってことくらい,ばかでもわかる。それなのに,どうして私は冷静になれないんだ」「こんな小さな役で喜ぶなんてダサい」「もう二度と誰も愛せない」「こんなひどい気持ちは手に負えない」あらゆる感情障害*注: 私たちは必ずしもすべての限局性恐怖症を感情障害とみなしているわけではない。限局性恐怖症のなかでも,頻繁に激しいネガティブ感情を体験したり,そうした感情に対して嫌悪反応を示したり,回避的な対処を試みている場合にのみ,感情障害と呼ぶべきである。表2.1

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