1. 腸管粘膜バリアと腸内微生物叢総論31)物理的バリア物理的バリアは,腸粘膜を被覆する粘液層,腸管上皮細胞表面に存在する糖蛋白質の糖鎖によって形成される糖衣,細胞間接着装置である密着結合と接着結合を含み,文字どおり物理的な障壁となって微生物の腸管組織への侵入を防止している.粘液層は,杯細胞から産生されるムチンという糖蛋白質によって構成され,特に大腸においては分厚く,外粘液層と内粘液層の2つの層に分けられる.ムチン分子に付加されている多量の糖鎖が粘液の粘性を生み出し,また上皮細胞表面の糖鎖に結合し接着しようとする病原微生物に対して競合的に結合することで,細菌侵入,接着を防止している.腸上皮直上に存在する内粘液層は,ムチン分子が網目状に密に重合した構造であり,その内部には腸内微生物がほとんど観察されず,ほぼ無菌の状態が保たれている.一方で,その外側に存在する図1 小腸上皮の概観図管腔Tuft細胞パイエル板粘膜固有層腸絨毛腸陰窩抗菌ペプチド粘液IgA杯細胞吸収上皮細胞幹細胞Paneth細胞内分泌細胞M細胞TA細胞表1 腸管における物理的バリアと化学的バリア物理的バリア粘液層(外粘液層と内粘液層)糖衣(Glycocalyx)細胞間接着装置(密着結合と接着結合)化学的バリアα-ディフェンシンβ-ディフェンシンカテリシジンReg3ファミリー分子リゾチームホスホリパーゼA2ラクトフェリン
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