読み解くためのKeyword33解答第2章 高次脳機能障害の基礎1 ①反対側,②認識,③右,④左,⑤体幹,⑥自己身体中心,⑦物体,⑧物体中心,⑨側頭,⑩頭頂,⑪後頭(⑨,⑩,⑪は順不同), ⑫大脳基底核,⑬空間性注意障害,⑭表象障害2 ⑮道順,⑯建物,⑰旧知,⑱新規3 ⑲精神性注視麻痺,⑳視覚性注意障害,㉑視覚失調,㉒固着,㉓視線,㉔注視4 ㉕視覚障害,㉖運動障害(㉕,㉖は順不同),㉗構成,㉘単純化,㉙左半側空間無視半側空間無視 大脳半球の損傷側と反対側に提示された刺激を報告すること,刺激に反応すること,刺激の方向を向くことが障害される病態である1)。つまり,損傷半球とは反対側の空間における対象を認識できなくなる。左右どちらの半球損傷でも生じるが,右半球損傷による左半側空間の無視が多く,症状は持続し,重度であるとされる。左半側空間無視では,日常生活において,左側の壁や物にぶつかる,左側の食事を残すなどの症状がみられる。無視される半側の空間は,体幹の正中を基準とする場合(自己身体中心の無視)と物体の正中を基準とする場合(物体中心の無視)がある。右半球の側頭・頭頂・後頭葉結合部のほか,前頭葉や後頭葉,視床などの大脳基底核などさまざまな部位の損傷で生じる。発現メカニズムとしては,空間性注意の右側への強い偏りによって生じるとする空間性注意障害説が有力とされている。そのほかに,脳内表象の左側が障害されたために生じるとする表象障害説がある。道順障害 熟知した地域内で,ある地点からほかの地点への道順(方角)の想起障害である。目印となる建物や風景はわかるが,それに基づいてどちらの方向に進んでよいのかわからず,道に迷う病態である。旧知の場所についても,新規の場所についても生じる。また,よく知っている場所の地図を描くことや,地図上での場所を示すことができない。脳梁膨大後部から頭頂葉内側部が重視されている。バリント症候群 精神性注視麻痺,視覚性注意障害,視覚失調の3徴候からなる症候群で,Bバリントάlintが最初に報告した。精神性注視麻痺とは,視線が1つの方向や対象物に固着し,ほかの方向や対象物への自発的な視線の移動や注視ができなくなる症状である。一方で,指示に従っての視線の移動は容易である。視覚性注意障害とは,1つの対象物を注視すると,その周囲にあるほかの対象物に注意が向かなくなる症状である。視覚失調とは,注視した対象を手でつかみ損ねる症状である。病巣は,両側の頭頂後頭領域が典型的である。構成障害 著しい要素的な視覚障害や運動障害が原因とは考えられない,構成的な課題に現れる障害である2)。右半球と左半球どちらの損傷でも生じ,前方病変でも後方病変でも報告されている。左半球損傷患者と右半球損傷患者では,症状が質的に異なるとされる。右半球損傷では,左半側空間無視の影響が大きくみられる。左半球損傷では,細部の欠如や絵の単純化がみられる。半側空間無視と知的機能の低下の構成障害への影響は大きい。
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