2種類の単剤療法を試みても発作が抑制されない例に2剤併用療法を行ったところ,25%の例で発作が消失したとのデータがある.3剤目の単剤治療を試みるよりも,2剤併用のほうが有用である.類似の作用機序をもつ抗てんかん薬を組み合わせる意義は乏しく,異なる作用機序(図1,図2,表1,表2)の薬物を組み合わせる.合理的他剤併用療法とは,発作抑制効果を増強させる目的で意図的に2剤目の薬剤を選択することをいう.12急性症候性発作を除外する急性症候性発作を除外するてんかんの確定診断てんかんの確定診断焦点てんかんと全般てんかんを区別する焦点てんかんと全般てんかんを区別するる単剤療法が原則単剤療法が原則併用療法は作用機序の異なる薬剤を組併用療法は作用機序の異なる薬剤を組み合わせるみ合わせる急性疾患(脳血管障害,中枢神経感染症,頭部外傷,代謝性疾患,薬物中毒・離脱など)の急性期の発作は,基礎疾患により誘発された発作(induced seizure)であり,急性症候性発作とよばれる.基礎疾患の治療が基本であるが,発作再発の可能性が高い場合には抗てんかん薬治療もあわせて行う.急性症候性発作のみの場合は,長期にわたる抗てんかん薬治療は行わない.てんかんは慢性疾患であり,急性疾患や心因性疾患を除外して,てんかんの確定診断をしてから抗てんかん薬を開始する.てんかんは「非誘発発作(non-induced seizure)あるいは反射発作(refl ex seizure)が24時間以上離れて少なくとも2回生じる」と定義される.2014年に国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)は,「1回の非誘発発作あるいは反射発作であっても,以降10年間にわたって高い発作リスクが存在する」場合は,てんかんと診断してよいと新たな基準を追加した.すなわち,初回発作であっても神経学的異常・脳波異常・脳画像病変・てんかんの家族歴がある,あるいは高齢初発の場合などは治療開始を考慮する.焦点起始発作(焦点てんかん)と全般起始発作(全般てんかん)では有効な抗てんかん薬が異なる.発作症状,神経学的所見,脳波および画像所見などを総合して両者を鑑別する必要がある.情報不足のため焦点起始か全般起始か不明の発作ではとりあえず治療スペクトルの広い薬剤を使用するが,どちらかに判明した時点で薬物選択を再検討する.てんかん治療は単剤療法が原則で,単剤治療はコストが低く,副作用が少なく,服薬管理が簡便で,相互作用を回避できる.抗てんかん薬の効果と副作用には個人差が大きいため,適切な抗てんかん薬の単剤を少量から開始して副作用に注意しながらゆっくりと増量し,発作が抑制されれば維持用量以下の用量であってもそれ以上の増量は必要ない.多くのてんかん初発例は平均的な用量で発作が抑制され,常用量で発作が抑制されない例に最大用量まで増量しても改善がみられる例は多くない.効果判定には十分量を十分な期間(最長発作間隔の3倍以上,あるいは1年以上のどちらか長い方)使用する必要がある.未治療例の前向き研究によると,1剤目の単剤で47%の発作が抑制され,2剤目の単剤では1年13%,3剤目の単剤では1%の発作抑制にとどまった.したがって,2種類の抗てんかん薬単剤に反応しない場合は併用療法を考慮する.従来の抗てんかん薬は電位依存性Naチャネル阻害やGABA受容体賦活作用が主体であった.新規抗てんかん薬のGBP(Caチャネルa2dサブユニットに結合),LEV(シナプス小胞蛋白SV2A抗てんかん薬治療の原則
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