20 第2章 時間薬理学 POINT 発症する時刻や症状が増悪する時刻に日内リズムを認める疾患がある.投与時刻によって有効性や安全性が異なる薬物がある.疾患の日内リズムおよび薬物の時間薬理学的特徴を考慮に入れた薬物療法を時間治療という. 多くの生体機能に日内リズムを認めますが,発症や症状の増悪する時刻に日内リズムが明らかにされている疾患もあります(表1).さらに,治療に用いる薬物も投与時刻によって血中薬物濃度が異なり,有効性や安全性に影響を及ぼすことがあります(この点を明らかにする研究分野を時間薬理学といいます).したがって,薬物を適正に使用するためには,疾患の日内リズムおよび薬物の時間薬理学的特徴を考慮に入れて用法・用量を決める必要があります(これを時間治療といいます). 表1 発症する時刻や症状が増悪する時刻に日内リズムを認める疾患疾患時刻①疾患の発症心筋梗塞早朝~昼異型狭心症夜間~早朝脳梗塞夜間~早朝脳出血夕胸部大動脈破裂朝~昼②疾患の増悪消化性潰瘍夜間喘息早朝アトピー性皮膚炎夜間細菌感染による発熱朝~昼ウイルス感染による発熱夕緑内障早朝片頭痛夜間関節リウマチ早朝 経口投与された薬物は腸管から吸収されて血中に入り,その後,体内に分布し,さらに肝で代謝された後,主に尿中や胆汁中に排泄されますが,これらの過程( 吸収,分布,代謝,排泄)に関与している生体機能に日内リズムが存在するため,投与時刻によって血中薬物濃度が変化することがあります. 以下に各過程における日内リズムの特徴を説明します.時間薬理学第2章
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