2484適正使用のための臨床時間治療学
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 時間薬理学  21第2章 時間薬理❶腸管からの薬物吸収 -脂溶性薬物は昼間のほうが夜間に比べて吸収されやすい 経口投与された薬物が胃を通過する速度(胃内容排泄速度)は昼間のほうが夜間よりも速く(図1)1),さらに,小腸の蠕動や腸管血流量も昼間のほうが大きい.このような要因によって,昼間に投与された薬物は速やかに吸収部位に達し,吸収される薬物量が増加しやすいため,夜間(夕方)に投与した時に比べて血中薬物濃度は高値を示すことが多いです.さらに,このような投与時刻による吸収の差は脂溶性薬物のほうが水溶性薬物よりも大きいことが知られています.例えば,脂溶性β遮断薬プロプラノロールの血中濃度は朝投与時のほうが夜投与時よりも高いが(図2),水溶性β遮断薬アテノロールではこのような投与時刻による血中薬物濃度の差は小さくなっています(図3)2). 多くの脂溶性薬物が治療に用いられていますが,これらの薬物は投与時刻によって効果が異なる可能性があります.事実,脂溶性Ca拮抗薬であるニトレンジピンの血中薬物濃度は朝(午前9時)投与時のほうが夕(午後9時)投与時よりも高く,それに伴って降圧効果は朝投与時のほうが大きいことが報告されています3). 図1 胃内容排泄速度における昼間と夜間の差M±SE,n=16.午前8時摂取午後8時摂取20406080摂取後時間(分)10090807060504030胃内固形物停滞率(%)

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