働省は,小児がん拠点病院に地域における小児・AYA世代がん患者に適切な医療・支援を提供することを求めている.一方,がん診療連携拠点病院には,AYA世代がん患者について治療,就学,就労,生殖機能等の状況や希望を確認し,対応可能な医療機関やがん相談支援センターに紹介することを求めており,がん相談支援センターがAYAがん患者の治療療養や就学,就労支援に関する相談業務を担うものとされている2). AYA世代の患者は少なく,成人がん診療のなかで埋もれやすいため,AYA世代の患者の存在を網羅的に把握し,悩みやニーズを適切に評価して,必要な対応につなげることが重要である.また,AYA世代のニーズは多様で複数の課題を抱えることが少なくないため,多職種チーム(AYA支援チーム)による包括ケアが望ましい3).しかし,がん拠点病院であってもAYAがん患者数は多くなく,医療者の診療経験が蓄積されにくいことから,医療機関の交流が望まれる.また,生殖医療,教育支援,就労支援,ピアサポートなど院内だけで対応が完結することが困難な課題については,院外の専門機関や団体との連携が必要であり,こうした領域において地域をあげた連携体制の構築が望まれる.1妊孕性温存 がんの治療成績の向上と生殖補助医療の進歩により,小児・生殖年齢のがん患者に対して,治療開始AYA世代のがん患者の包括ケアAYA世代のがん患者の医療的支援E AYA世代のがん 2.AYA世代がんの包括医療189小児がん第2章図1◆治療中のAYA世代がん患者の情報ニーズアンメットニーズ:情報が欲しかったが,なかった=unmet,あった=met.治療中に必要だった情報順(15歳以上発症,その他,無回答を除く)(清水千佳子,他:厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究.(研究代表者:堀部敬三)平成28年度総括・分担研究報告書,2017より引用)以下の情報が欲しかった(%)診断・治療のこと 96.4%後遺症・合併症のこと 92.3%経済的なこと 82.8%健康管理のための食生活 80.2%今後の自分の将来のこと 78.6%容姿のこと 77.1%体力の維持、または運動すること 75.6%年齢に適した治療環境 73.4%がんの遺伝の可能性について 70.5%不妊治療や生殖機能に関する問題 70.3%味覚・嗅覚・食嗜好の変化等 66.1%医療者との関係のこと 65.3%仕事のこと 63.8%他のAYA発症のがん患者・経験者との交流 62.5%生き方・死に方 59.5%家族の将来のこと 56.5%家族・友人など周囲の人との関係のこと 52.6%自分らしさ 47.9%セックスのこと 46.1%結婚のこと 31.0%恋愛のこと 27.7%学業のこと 20.0%14.5%27.4%48.7%41.6%70.9%19.3%42.5%68.1%55.1%34.8%24.4%42.7%55.9%63.3%74.3%74.1%49.5%70.7%63.6%77.6%76.9%38.9%unmet needs(%)unmetmet
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