2490職場のメンタルヘルスハンドブック
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15第2章 職場巡視ムの考え方に沿って,PDCAを回す形で進めるのが原則です.職場巡視のPDCAでは,PLAN(計画)として年間の職場巡視計画の立案および実際の職場巡視の準備,DO(実施)として職場巡視の実施と職場巡視結果の記録,CHECK(評価)として改善事項についての計画や報告の提出,ACTION(改善)として職場の改善,安全衛生委員会への報告・審議,残存リスクへの対応計画があります.しかし,メンタルヘルス面については,上述したように,職場巡視によって問題点を指摘し改善を求めるという部分は,通常それほど多くありません.他の活動に活かす情報の収集に注力する必要があります.巡視中は作業環境や設備面の確認とともに実際の労働者の動きや行動の範囲,具体的作業の内容まで可能な限り観察します.声をかけて話を聴くのは,情報収集には有用ですが,作業を中断させることになりかねませんから,十分な配慮が求められます.また,自発的に健康相談に訪れた労働者に,その後の様子を確認するのも,本人が周囲にそのことを知られたくない場合もありますので,軽率にはできません.職場巡視では,当該職場の管理者に立ち会い,同行を求めたいところです.随時業務内容の概要,ストレス要因になりやすい事項,日頃気にかけている点などを確認することができます.過重労働の実情を知るにも,よい機会となります.巡視中の立ち話の中で,心配な部下のことを相談されるようなことも案外あるものです.また,事情が許せば,職場巡視の後,巡視をした職場の関係者幾人かと懇談の場を設けてもらい,仕事と健康に関する考えや思いを自由に語ってもらうと,一層現場に対する理解が深められるでしょう.そうした取り組みによって,産業保健スタッフのみられ方が変わるかも知れません.健康診断やその結果をもとにした保健指導ばかりを行っているというイメージがあるとすれば,それを変えることが期待できます.産業保健活動の幅を広げられる可能性があります.職場巡視に限らず,普段から機会を見つけて,ちょっと現場に足を運ぶ習慣をつけることも,産業保健スタッフには重要です.現場を知らなければ,質の高い仕事はできません.

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