37第2章 事例集午前中V入院,母親Wもつき添いのため来院昼頃Y病院4階の病室(本件病室)の入口からみて左手前のベッド(本件ベッド)上で,医師Xは,Vに衣服をめくってもらい,右胸を触診,切開部位にマジックペンでマーキング,写真撮影(ただし,左胸の触診をしたかどうかについては双方に争いあり)13:30頃Vが5階の手術室に入室.手術室では,手術台のうえで,Vに衣服をめくってもらい,医師Xが,両胸の写真撮影13:35・麻酔科医師Bが全身麻酔を開始.医師Xは,手術台のVの胸を触診し,右乳腺超音波検査施行・ 医師Aが入室.医師Xと医師Aが手術台のVを挟んで本件手術の打ちあわせ.医師Xは,切開部位を短くすることとし,マーキングを修正して両胸を写真撮影13:37プロポフォール投与13:39ボナフェック坐剤約50 mg13:57ペンタゾシン約5 mg14:00本件手術開始14:32本件手術終了14:42・麻酔終了.麻酔薬の総量:笑気約60 L,セボフルラン約15 mL,プロポフォール約200 mg・医師Bが「終わりましたよ」と声かけすると,Vは小さくうなずく.嚥下反射+,自発的体動あり・閉眼したまま2,3回痛みを訴えたが,医師Aの問いかけには応じず,うわ言のように痛みを訴えた14:45・ 医師Xと医師AがVを本件ベッドに乗せて,手術室から本件病室に運び,看護師CおよびDにVを引き継ぎ,看護師CおよびDが本件病室の左手前のスペースに本件ベッドを設置・ 本件病室は,入口の幅は約1.3 mで,入口扉は閉まらないように固定されている.幅・奥行きともに6 mに満たない長方形の部屋で,4つのベッドが可動式カーテンで間仕切りされて置かれ,満床状態.Vは,医師Aの呼びかけに対し,ぼそぼそと「痛い」と言い,医師Aが,看護師Cに対し,鎮痛薬使用を指示・ 看護師Cは,Vに対し検温,血圧測定.Vはナースコールを握らされ,その際,無表情で目を閉じたまま「ふざけんな,ぶっ殺してやる」とかすかな声で言った・ 看護師Cが看護師EにVを引き継いだ.Vは「痛い痛い」と小さい声でつぶやき,少しもがいていた.看護師Eがナースステーションで鎮痛薬の準備を行っている時に,ナースコールが鳴った14:50~14:55看護師Eが本件ベッド脇に行くと,Vは「痛い痛い」と言って,痛そうな様子だった.ロピオン点滴投与開始.Vの目は半開き,痛みを訴えていた15:00看護師Eがバイタルチェック15:12VはスマートフォンのLINEで上司Zに対し「たすけあつ」「て」「いますぐきて」とのメッセージを送信(本件メッセージ1)15:00~15:151,2回Vがナースコールを押して,看護師Eが本件ベッド脇に行った15:15看護師Eがバイタルチェック.Vの意識は少しずつはっきりしてきて目が半開きで苦悶表情を浮かべながら「痛い痛い」「ここはどこ」「お母さんどこ」「どうして」などと発言したおそらくその直後Vは,本件ベッド脇にきた母親Wに対し,Vの左胸の臭いをかいでもらったが,Wはわからないと答えた15:20ナースコールがあり看護師Eが本件ベッド脇に行くと,Vの覚醒はよりはっきりしていて,母親Wに対し,「お母さん,どうしよう,電話しなきゃ」と言った15:21~15:22Vは上司Zに対し「先生にいたずらされた」「麻酔が切れた直後だったけどぜったいそう」「オカン信じてくれないた」「たすけて」などのメッセージを送信(本件メッセージ2)15:30・ ナースコールがあり看護師Eが本件ベッド脇に行くと,Vは,医師Xに胸を触られたり,しゃぶられたり,医師Xが陰茎を触っていたりしたことなどを申告し,ナースコールを押したのに,看護師が全然こなかったなどとの苦情を述べた.Vによる痛みの訴えはなかった・ 看護師Eが身体の清拭の提案をしたが,Vは断った 表1 裁判所が認定した平成28年5月10日の事実経過
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