2509産婦人科医療裁判に学ぶ
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168第3章 医療裁判Q & Aであるという医学的知見が一般的に確立しているとはいえないとして,過失は認められないとしました. 争点4: 手術IIを手術Iの3日後に実施したことの適否 判 断:2度目の減胎手術を翌日や翌々日に近接して行わなければならないとする医学的知見はなく,連日の麻酔による母体への負担等に配慮して3日後に実施した判断が不合理とはいえないとして,過失は認められないとしました. 争点5: 手術IIの前に転医させなかったことの適否 判 断:手術Iにおいて1胎しか減胎できなかったことから直ちにほかの医療機関に転医させる義務が生ずるものとは言い難いこと,減胎手術を専門に行うことを標榜する医療機関はほとんどなく適切な転医先医療機関をみつけることは困難であることなどから,過失は認められないとしました. 争点6: 膜性診断を正確に実施し単胎と双胎2組が含まれることを確認したうえで単胎のみを残すという選択肢を説明しなかったことの適否 判 断:そもそも被告医師は5胎を5卵性5絨毛膜5羊膜と認識したうえでそのうち2胎を残すことを原告らに勧めたのみで,2胎を残す方法しか選択肢がないかのような説明はしていないこと,多胎の態様について正確に把握することは難しかったと考えられ,被告医師について5胎が双胎2組(うち1組はMD双胎)であったと認識し得たとはいえないことなどから,説明義務違反は認められないとしました. 上記のほかに,手術IIにおいて児Bの頭部を穿刺したか否かも争点となりましたが,頭部穿刺の事実は否定されています. 本事案での過失に対する裁判所の判断はどのように理解すればよいでしょうか.主として,①原告の主張する事実関係が真実と異なる,②原告主張の医学的知見が確立していない,として過失が否定されています. ①についてはわかりやすいのですが,②については補足が必要と思われます. 原告(患者側)が過失を主張する場合,被告(医療機関側)の医療行為を特定して,その医療行為が,守るべき注意義務に違反したものである,という主張を行います. そのうえで,原告は,被告の行った医療行為ではなく別の医療行為を行うべきであったなどと主張し,被告としては別の医療行為を行うべき医学的知見はないなどと反論しました. これら双方の主張に対する裁判所の判断として,被告の主張を認めたというものです(なお,控訴審では,②に関する原告の主張を一部認めました).1 過失に関する判断に関して

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