2510明日から使える!小児がん治療のオキテ
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第4章 新しい治療法における合併症対策ないタイミングで発熱した場合は,中心静脈カテーテル感染症を含めて鑑別する必要があります.神経学的事象についても,白血病の再発やブリナツモマブ以外の治療の影響,ウイルス性脳炎や細菌性髄膜炎などの鑑別が必要です.ブリナツモマブは脳脊髄液中に移行しないため,治療途中に中枢神経系(central nervous system:CNS)症状を認めた場合はCNS再発の可能性を常に念頭におく必要があります.同様に,ブリナツモマブが髄液移行しないことからCNS再発予防目的にメトトレキサート(methotrexate:MTX)などの髄注を,治療前後もしくは途中に追加することがしばしば行われており,MTX脳症(stroke-like syndrome)の原因になることが考えられます.感染症についても,ブリナツモマブ投与による低ガンマグロブリン血症に対して適切な免疫グロブリン補充等が実施されていない場合には,原因となる可能性があります.どうやって治療するの?ブリナツモマブの代表的な副作用に対する対処法を以下に示します.1.CRS発症予防目的に,デキサメタゾンの前投与を行います.小児(18歳未満)の場合,初回サイクル開始6~12時間前に10 mg/m2を,開始前30分以内に5 mg/m2の前投与を行います.なお,小児では2サイクル目以降の前投与は必ずしも必要とされていませんが,1サイクル目で副作用が出た場合は,2サイクル目以降も前投与を行います.実際にCRSを発症した場合は,ブリナツモマブを適宜中断または中止をし,デキサメタゾン投与などを考慮します.重症例に対して,トシリズマブなどの治療が行われた報告もあります5).2.神経学的事象発症した場合は,ブリナツモマブを適宜中断または中止します.3.低ガンマグロブリン血症定期的にIgGの測定を行い,適宜免疫グロブリン補充を行います.文献1) von Stackelberg A, et al.: J Clin Oncol 34: 4381-4389, 20162) Horibe K, et al.: Int J Hematol 112: 223-233, 20203) Brown PA, et al.: JAMA 325: 833-842, 20214) Locatelli F, et al.: JAMA 325: 843-854, 20215) Teachey DT, et al.: Blood 121: 5154-5157, 2013(富澤大輔)??186

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