2510明日から使える!小児がん治療のオキテ
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序 文この本は編者代表の松本公一氏の妄想から生まれました.彼は患者さんのことを「とことん想い,小児がん医療をよりよくしたい」という一念で生きてきました.彼は考えました.誰が読んでも小児がんのことがわかる本を作れば,小児がん患者さんは,よりよい治療を受けられるはずだと.松本公一氏は偉大な芸術的才能の持ち主です.ロをデザインする才能は一流でして,音楽にも秀でています.ある日,居室で崩れてきたCDに埋もれた彼は,酸素欠乏になりながら「わかる本ってなんだろう」と妄想しました.酸素欠乏のお陰で天啓が降りてきました.そうだ,「オキテ」だ.「オキテ」さえわかれば,小児がんの真髄に到達できるはずだ,と.そんなこんなで「明日から使える!小児がん治療のオキテ」が,生まれました.この本の執筆者一覧を見てみましょう.たいていの医学書は医師ばかりが並んでいますよね.でもこの本は違います.看護師,薬剤師,歯科医師,心理療法士,作業療法士も書いているのです.通常は小児がんを学びはじめた若手医師,総合診療医,小児科専攻医を読者と想定しています.でもこの本は違います.小児がんに携わる全ての医療職の方に読んでいただきたいのです.小児がんについて学びたい医学生,看護学生,薬学部生に読んでいただきたいのです.小児がん患者さんの親御さんにも読んでいただきたいのです.松本公一氏は多くの人に役立つことを願っており,「この本がたくさん売れて印税生活すること」を妄想しているのでは,決してありませんのであらかじめお断りしておきます.この本の目次を見てみましょう.通常は小児がんの種類ごとに順番に書かれています.でもこの本は違います.「序章 小児がん治療について知っておきたいこと」で全体を眺めたあとは,「第1章 化学療法中に起こるいろいろなこと」「第2章 検査中に起こるいろいろなこと」「第3章 血細胞移植は合併症のオンレード」「第4章 新しい治療法における合併症対策」と,治療中や検査中にしばしば起きることについて具体的に書いてあるのです.本の副題にあるように,小児がん治療に際して出会う有害事象について手取り足取り,親切極まりなく書いてあるのです.「何が起こりそうか事前に知っておけば,起こった事態が悪化しないように一歩先の対応ができる」ようになって欲しいというのが,松本公一氏の願いです.小児がんの多くが治る時代になってきました.でも,何らかの長期合併症などの合併症がしばしば起こります.何が起きるか,起きるかもしれないのか,知っておくことはすごく大切です.合併症や長期合併症とどう付き合って生きていけばよいのか,「第5章 小児がんは長期フォローアップが大切」には,アドバイスやヒントがたくさん散りばめられています.松本公一氏は「小児がん患者さんが治ったあとの長い人生を楽しく有益に生きて欲しい」と,願っているのです.この本は,「小児がんに少しでも興味のある全ての人に読んでいただきたい」という,妄想から生まれました.この本が,「小児がん医療をよりよくする」という,彼の一念に役立つことを祈ります. 2022年3月吉日 石黒 精 国立成育医療研究センター小児がんセンター血液内科v

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