2511はじめて学ぶ子どもの下痢・便秘
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疾患概要二分脊椎とは,脊椎の閉鎖に欠陥が生じた状態である.脊椎の背側が二分し開大している状態(椎弓癒合不全)で,顕在性二分脊椎症と潜在性二分脊椎症の2つに大別される.原因としては多因子によって生じる神経管閉鎖障害である.母体因子として2型糖尿病1)や抗てんかん薬(バルプロ酸)の内服など1),遺伝因子としてメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)2)・メチオニン合成酵素還元酵素(MTRR)3)などの遺伝子多型や,環境因子として妊娠中の葉酸摂取不足の関与がいわれている4).1)潜在性二分脊椎症閉鎖性二分脊椎症ともいわれ,70~80%の頻度で背部の皮膚に異常が認められる.具体的には,皮膚洞(底部が見えないもの),皮膚陥凹,毛細血管腫,異常毛髪,多毛や色素沈着である.また病変部の脊髄部分に脂肪腫を伴うことがある.2)顕在性二分脊椎症開放性二分脊椎症ともいわれ,皮膚が欠損して囊胞状に組織が突出する.囊胞状に突出した組織に髄膜(髄膜瘤),脊髄(脊髄瘤)や両方(脊髄髄膜瘤)が存在する(図1) .二分脊椎症では,無症状から下肢の麻痺や変形,膀胱・直腸障害による排泄機能障害までさまざまな症状が認められる.排便障害は,直腸肛門機能障害による便秘や便失禁である.病 態1)潜在性二分脊椎症脊髄神経が周囲組織(骨・筋など)に癒着して,周囲組織の成長により脊髄神経に引っ張られる力が加わり脊髄神経に障害が起こる.また脊髄神経が脂肪腫(脊髄脂肪腫)によって圧迫されることで,脊髄神経損傷が起こる.2)顕在性二分脊椎症囊胞状に突出した組織内に髄膜(髄膜瘤),脊髄(脊髄瘤),や両方(脊髄髄膜瘤)が存在し,脊髄神経損傷が起こる.[第3章]便   秘D 原因と代表的な疾患外科的疾患 4▶▶二分脊椎による排便障害正常潜在性二分脊椎症脊髄髄膜瘤図1 二分脊椎症100

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