2511はじめて学ぶ子どもの下痢・便秘
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ロール不全が背景に存在すると考えられ,たとえば排便の際に弛緩する必要のある外側肛門括約筋は遺糞症の児では逆に収縮するため便秘になりやすい場合があり1, 2),そのようなメカニズムが「便秘を生じるメカニズム」として含まれると考えられる.また,小児の便秘症の診断には一般的にRome IIIが用いられるが,Rome III基準のみでは遺糞症における便秘を慢性機能性便秘症と区別することは困難である4).便失禁があり遺糞症が疑われる例では,DSM-5の診断基準を参照することが望ましい.鑑別診断Hirschsprung病や二分脊椎,肛門狭窄症,慢性下痢症など便秘や失禁の原因となる器質的な疾患の除外が必要である.遺糞症に特異的な検査はなく,便秘(特に便塞栓)の評価のため,身体的診察に加えて腹部超音波検査や腹部単純X線検査が行われる場合がある.鑑別すべき器質的疾患(Hirschsprung病など)の除外に必要な諸検査(MRIや直腸粘膜生検など)が行われる場合もある.合併症と予後遺糞症の予後は原因や症状の重症度・持続期間,合併症により異なり,合併症としては慢性的かつ高度な便塞栓に伴う巨大結腸症が知られている.自然治癒する場合もあり,青年期以降まで続くことはまれと考えられている.治療としては,便秘を伴う場合には,ポリエチレングリコールを主成分とするモビコールⓇ配合内用剤のような緩下剤の経口投与が試され,便塞栓に対してはdisimpaction(便塊除去)が行われる場合がある.遺糞症の症状がRome III基準における慢性機能性便秘症と合致する場合には慢性機能性便秘症に対する治療・ケアを試みてもよい4).また,便秘の有無にかかわらず,決められた時間にトイレに座り排便を試みさせるなど認知行動療法的介入も有用である.便失禁による児の自尊心の低下や学校などでの社会的孤立を避けるため,家族や学校の協力を得ることも重要であり,支持的精神療法やリラクゼーション法が行われる場合もある.引用文献1) American Psychiatric Association: Encopresis. DSM-5: Diagnostic and statistical manual of mental disorders. 5th ed, American Psychiatric Association, Washington, DC, 357-359, 20132) 井上令一(監修),四宮滋子,他(翻訳):遺糞症.カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開.第3版,メディカルサイエンスインターナショナル,1357-1359,20163) Mellon MW, et al.: The relevance of fecal soiling as an indicator of child sexual abuse: A preliminary analysis. J Dev Behav Pediatr 27:25, 20064) 日本小児栄養消化器肝臓学会,他(編):小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン.診断と治療社,32-43,2013(徳原大介)遺糞症緩下剤(ポリエチレングリコール製剤など)disimpaction(便塊除去)認知行動療法支持的精神療法4歳以上または4歳相当の発達水準ー治療ー機能的要因心理的要因肛門括約筋のコントロール不全など転居・離婚性的虐待など不適切な場所(床など)への意図的あるいは意図しない便排泄巨大結腸症の合併小児科医児童精神科医小児外科医図1 遺糞症の病態と治療119第3章 便 秘D 原因と代表的な疾患

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