平成23~28年度の厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業研究において,「小児期からの希少難治性消化管疾患の移行期を包含するガイドラインの確立に関する研究」の一環として「先天性吸収不全症」の全国調査研究が行われた.この研究では,平成17年からの10年間を対象期間として小児領域で下痢を主訴としうる疾患群の全国調査が行われた(表1).本調査研究は,稀少難治性消化管疾患の診療ガイドラインを整備することを目的とするが,「先天性吸収不全症」という概念が曖昧で,個々の疾病の集合体として十分なエビデンスに基づいた診療ガイドラインを考案することは困難であると結論づけられた.調査対象疾病のうちほとんどは,それぞれ独立した成因や病態に基づく疾患概念・定義を有している.しかし,症例数が最も多かっ緒 言た乳児難治性下痢症は,発症時期や下痢の遷延という症状によって規定され,そのなかから後に成因が確定したり新たな病態が解明される可能性のある,複数の疾患の集まりである.一方,政策医療の観点では,乳児難治性下痢症は小児慢性特定疾病の対象疾病となっていない.また,成因が不明で,稀少かつ難治で,成人移行例が存在するにもかかわらず指定難病の対象ともなっていない.そのため,平成29年度から構成された研究班「小児期から移行期・成人期を包括する希少難治性慢性消化器疾患の医療政策に関する研究」では,新たに「難治性下痢症」を対象とした研究班が組織され,「乳幼児において2週間以上続く下痢をきたす疾患」の病態,病因,および検査法や鑑別診断を整理することとした.それに基づいて,わが国の実表1 全国症例数調査結果(対象期間:平成17年1月〜26年12月)乳児難治性下痢症53例ミトコンドリア呼吸鎖異常症31例Shwachman-Diamond症候群30例先天性クロール下痢症17例原発性リンパ管拡張症15例多発性内分泌腺腫症 9例IPEX症候群・自己免疫性腸症 7例果糖吸収不全症 5例先天性ナトリウム下痢症 4例先天性乳糖不耐症 3例無βリポ蛋白血症 2例VIP産生腫瘍 2例グルコース・ガラクトース吸収不全症 2例微絨毛封入体病 2例ショ糖・イソ麦芽糖分解酵素欠損症 1例セリアック病 1例リパーゼ欠損症 1例エンテロキナーゼ欠損 0例tufting enteropathy 0例小児科関連610施設,小児外科関連98施設からそれぞれ431施設(71%),98施設(100%)の回答を得た.全体で回収率は75%であった.1
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