2525難治性下痢症診断の手引き
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toddler’s diarrhea1)概念・定義よちよち歩きの幼児(toddler)期に,非特異性の下痢が数週間から数か月続く状態をtoddler's diarrheaとよぶ.2)病  因真の原因は不明であるが,腸蠕動速度の相対的な亢進,不安定性から消化不良性下痢をきたすものと考えられ,幼児型の過敏性腸症候群とも解釈される.食事中の甘味料やジュース,スポーツ飲料を摂ることでソルビトールやフルクトース,コーンシロップなどの糖質が小腸で吸収されずに大腸に到達して浸透圧性の水様下痢が誘発されることも一因と考えられる.3)症  状下痢は1日3~10回程度であり,便性は泥状ないし水様で血便はみられない.腹痛を訴えることは少なく基本的に児の活気や食欲があり,通常のカロリーが与えられていれば成長発育に問題がない.4)治療・予後甘味料を含む飲料の摂取を控えることが勧められるが,それ以外の食品除去は根拠に乏しく,乳製品や脂肪も制限する必要はない.水様下痢の回数が多い症例ではロペラミド塩酸塩(ロペミン®)が有効な場合がある.幼児期を過ぎるとともに自然軽快する.1ミトコンドリア呼吸鎖異常症(MRCD)腸症(mitochondrial respiratory chain disorders-related enteropathy)1)概念・病因・症状ミトコンドリアの役割のうち最も重要なエネルギー(ATP)の生合成を担うのがミトコンドリア呼吸鎖複合体である.したがって,これまでミトコンドリア病とされてきた疾患群は,現在ではミトコンドリア呼吸鎖複合体異常症(mitochondrial respiratory chain dis-order:MRCD)とよばれ,いかなる症状,いかなる臓器・組織,いかなる年齢,そしていかなる遺伝形式でも発病しうる.従来ミトコンドリア病として知られていた疾患としては神経・筋肉の疾患が主であったが,心筋症,肝症のほか,慢性仮性腸閉塞症や難治性下痢症の原因となることが明らかとなってきた.便の性状は水様下痢を呈するが,便電解質は症例や投与している経腸栄養剤の種類によって様々であり,浸透圧性下痢と分泌性下痢のいずれかに分類することは難しい.なお,本疾患は“ミトコンドリア呼吸鎖複合体欠損症”として小児慢性特定疾病に登録され,“ミトコンドリア病”として指定難病に登録されている.さらに,指定難病の関連資料としてミトコンドリア病ハンドブック(PDF版)が発行されている(http://www.nan-byou.or.jp/upload_les/mt_handbook.pdf).2疾患各論2難治性下痢症診断アルゴリズムの解説:アルゴリズムに含まれていない疾患の解説Ⅲ27

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