ivこの度は本書を手に取って下さり本当にありがとうございます.本書の最大の特徴である診療フローチャートを私が作り始めたのは2020年5月です.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し「第1波」と呼ばれた最中,COVID-19の感染対策を行う中で様々なジレンマと遭遇しました.正直な話,現場は新型コロナウイルスがRNAウイルスであることやエンベロープを持つウイルスであることなどの「正しい情報」は求めておらず,「実際どうすればいいのか」という問いに対する迅速かつわかりやすい回答を求めていました.文章主体のマニュアルを掲載しても何度も同じ質問を受けるため,質問の内容と回答をフローチャート形式にして電子カルテに掲載した結果,相談件数が激減しました.そこで,普段の診療においてもコンサルトに対する,より簡潔で明確,かつ相談下さった方にとって学びになるものは,この形式ではないかと気づいたのです.そして,上司であり師匠である笠井正志先生より「お前に相談しなくてもいいように,だれが見ても理解できる診療フローチャートを100個作れ」と半ば無理難題な指示を頂いたことからこの途方もない旅が始まりました.それから約2年かけて本書の出版にまで至ったという流れです.本書のフローチャートの特徴は本文にも記載しますが,以下の3点を意識しました.①思考過程を可視化し,感染症診療を1つのストーリーとして考察できる②文章よりも明らかに視覚的な理解が進む③自分が必要な情報以外の部分にも目を通しやすいそして,本書はエビデンスや原則【マスト】だけでなく,リアルワールドの愛・哲学・こどもに優しい診療を突き詰めた笠井イズムと,私が生き延びるために悩み,考え抜いたロジックと情熱【ベスト】を全て注ぎました.最終的に第1版では80個にとどまってしまいましたが,是非この渾身のフローチャートたちに目を通して頂ければと思います.最後に,このような機会を与えて下さった笠井先生,瀬崎さんをはじめとした診まえがき
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