の中心的センターとしての役割を担っていることがBallabioらにより提唱されており,オートファジー(autophagy)との融合,細胞膜の修復機能,脂質,ムコ多糖,蛋白質,糖質などを加水分解して再利用する機能,核との情報交換など様々な機能が報告されている25,26)[本書「B‒1ライソゾームと糖脂質」の項(p.12)の図1を参照].ライソゾームの60種余りの加水分解酵素が遺伝的に欠損すると,ライソゾーム内にこれらの物質が大量に蓄積し,臓器障害をきたす27)(表1).本書「B‒1ライソゾームと糖脂質」の項(p.12)の図4に,種々のスフィンゴ脂質(sphingolipid)の代謝とその異常症が示されているので参照されたい.b.グロボトリアオシルセラミド(Gb3)の蓄積 ファブリー病では,Gb3からセラミドジヘキソシド(ceramide dihexoside:CDH)の代謝を司るGLAのライソゾーム酵素の欠損により,主として血管内皮細胞,平滑筋細胞,腎臓,肝臓,脾臓,心臓などにGb3が蓄積する28,29).蓄積する物質はほかにもガラビオシルセラミド(galabiosylceramide)[別名ジガラクトシルセラミド(digalactosylceramide)],血液型物質のB型物質,B1型物質,P1型物質などの糖脂質がある.このほか,末端がα‒ガラクトース結合を有する糖蛋白質,またバイオマーカーとしてその蓄積が知られているグロボトリアオシルスフィンゴシン(globotriaosylsphingosine:lyso‒Gb3)は血管内皮細胞を増殖する作用,ならびに細胞へのシグナル伝達機構への異常,細胞毒性などが知られており,患者の病態,治療のマーカーとして知られている.蓄積物質を図3にまとめる.c.病態におけるオートファジーの役割 これらの蓄積物質と病態との関連は現在のところ不明であるが,ライソゾーム,オートファゴゾーム(autophagosome)等の蓄積による細胞傷害,サイトカイン放出による炎症反応など,病態は複雑であると考えられる.Ballabioら30)は,ライソゾームの役割は,従来考えられていたごみ箱的コンセプトではなく,細胞の中心的役割を果たしていることを示し4A ファブリー病の歴史と概要表1 ファブリー病の主要症状 1.自律神経症状:四肢疼痛,低汗,その他 2.神経障害:歩行障害,うつ病 3.皮膚症状:被角血管腫 4.眼障害:角膜混濁,視力低下 5.消化器障害:下痢,腹痛等 6.呼吸器症状:慢性の咳 7.腎障害:蛋白尿,腎不全 8.心障害:左室肥大,胸痛,不整脈,心不全 9.脳血管障害:頭痛,脳梗塞10.耳鼻科的障害:難聴,めまい11.内分泌障害:甲状腺機能低下図3 ファブリー病の酵素欠損と蓄積物質CDH:セラミドジヘキソシド,Gal:ガラクトース,Glu:グルコース.1.ガングリオシド系糖脂質ーGM2,CDH等2.ユビキチン系蛋白,Tau蛋白, ミトコンドリア,サブユニツト蛋白, オートファジー関連蛋白等3.サイトカイン系生理物質(炎症と関連)4.その他[糖脂質が臓器(心,腎等)に蓄積]ラクトシルセラミドGalαβガラクトシダーゼAβGalGluセラミドGal+ββGalGluセラミドlyso‒Gb3(Glc‒Gal‒Sphingosine)一次的蓄積物質(酵素欠損による)二次的蓄積物質ファブリー病の代謝異常1.糖脂質 1)Gb3,Gb2,lyso-Gb3 2)血液型物質(B型物質) 3)その他の生理活性糖脂質2.糖蛋白質(糖ペプチド等)グロボトリアオシルセラミド(Gb3)
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