iii 日本臨床神経生理学会は,臨床神経生理学という学問のもとに集まった多分野・多職種の基礎・臨床研究が一体となってヒトの神経系の複雑な生理や関連する疾患の病態を解明することを目的として活動しています.そのため,本学会の特徴を示す言葉として,しばしば“multidisciplinary”という用語が用いられます.確かに本学会は多分野・多職種が連携した学際的学会なのですが,高度な専門的知識や技術を用いて臨床神経生理検査が実施でき,その結果を正確に判断できる技能を身につけることは,分野や職種を問わず多くの学会員にとって共通の目標となっています. 日本臨床神経生理学会は2004年から,脳波分野と筋電図・末梢伝導分野に関する高度な専門的知識や技術の認定制度を設け,5年間の移行期間を経て,2009年から日本臨床神経生理学会認定医・認定技術師の筆記試験を開始しました.2015年6月には日本専門医機構未承認診療領域連絡協議会への入会が承認され,脳波分野と筋電図・末梢伝導分野の認定制度を学会専門医・専門技術師制度に変更しました.現在,この両分野の認定試験は筆記試験と面接・レポート試験の2部構成になっており,年1回実施されています. 術中脳脊髄モニタリングも高度な専門的知識や技術を用いて実施される臨床神経生理学的分野の一つです.2018年,当時本学会の試験委員会・委員長であった私は試験委員や多くの学会員の皆さんの協力を得て認定試験の筆記試験問題解説を編集し,診断と治療社から発刊しました.その本には術中脳脊髄モニタリングの問題解説も掲載されているのですが,ほんの一部で,実臨床で行われている術中脳脊髄モニタリングの奥行きの深さは全く反映されていませんでした.その最大の理由は,“術中脳脊髄モニタリング”が本学会で認定すべき一分野として独立していなかったことにあります.幸いにも,齋藤貴徳理事を中心とした術中脳脊髄モニタリング小委員会の多大な努力によって,本学会が認定する高度な専門的知識や技術の分野として「術中脳脊髄モニタリング」が創設され,現在,資格認定の移行期間に入っています.今後,他分野と同様に認定試験が開始される予定です.その意味でも,術中脳脊髄モニタリングのすべてが網羅された本書はベストタイミングで発刊される最高の参考書といえます.現在,術中脳脊髄モニタリングにかかわっていらっしゃる学会員の皆様,これから術中脳脊髄モニタリングのスペシャリストを目指す学会員の皆様,さらに多くの皆様が本書で学ばれ,術中脳脊髄モニタリング分野が大きく発展していくことを切に願っています.2022年6月吉日日本臨床神経生理学会理事長今井富裕刊行にあたって
元のページ ../index.html#3