2534発達障害の診断と治療 ADHDとASD
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▒第3章 ASDい定義となった.一方,自閉症以外のPDDの下位診断は,小児期発症PDD,非定型PDDが設けられた.さらに,以前は診断基準を満たしたが現在は満たさなくなった状態に対して「残遺型(residual)」という形容詞を冠してPDDに含めた結果,必然的にPDDは拡大した.三領域の症状を特徴とする中核的自閉症と,それ以外の亜型を含む拡大したPDDという概念構造は,DSM-IIIからDSM-III-R11),DSM-IV 12),DSM-IV-TR13)まで3度の改訂を経て引き継がれていく.Lorna WingとJudith Gould(1979) 14)は,ロンドン南東部での疫学研究の結果から,①対人的相互作用の障害,②言語または非言語コミュニケーションの障害,③想像的活動の障害と限局された反復・常同的活動,の三つ組を特徴とする子どもたちを,その対人的障害の程度に沿って重度ケースから軽症ケースまで,一つの連続体(continuum)に位置づけて包括的に捉えるフレームワークを提唱した15).そして軽症側の極に位置づけられる一群に,かつてAsperger16)が記述した「自閉的な特徴をもちながらも,文法的に正しく話し,孤立や対人無関心を示す」子どもたちが相当すると考えた.Wingはその特徴を有する成人の自験例に「Asperger症候群(AS)」と名づけ17),自閉症とASとの近縁性を見出した.さらに児童期に自閉症に合致しても,青年期になってASに移行する症例の存在から,両者は縦断的にも連続することを示唆した.Wingの論文17)以降,社会の慣習に従うことができず孤立した生活を送る,風変りな青年や成人を対象とした英国MRC(Medical Research Council)研究18)に引き継がれ,ASのプロトタイプが確立されていった.DSM-III-R(1987)11)は,前述の研究結果を反映し,「幼児期」の限定を削除し,対象の年齢にかかわらず,現症に基づいて自閉性障害(autistic disorder)の診断を可能とした.さらにASなど高機能群も診断に含めるため,発達水準による症状の変化を考慮した具体的な症状が記述された.自閉性障害は,〔A.対人相互反応の質的障害(5項目),B. 言語的,非言語的コミュニケーションと想像的活動の質的障害(6項目),C. 活動や興味の顕著な限局的パターン(5項目)〕三領域から少なくとも8項目(Aから2項目,B,Cから各1項目)に該当することが診断の要件とされた.特定不能のPDD(PDD not otherwise specified: PDD-NOS)は,Cの限局的行動がなくてもAの対人領域とBのコミュニケーション領域の症状があれば診断に該当するとされ,その結果,PDD診断が拡大することとなった.DSM-IV(1994)12)は,PDDの下位分類を特定することで,PDDを拡大させないで多様性を明確化しようとした.PDDの三領域は12の症状群〔A.対人相互反応の質的障害(4項目),B.コミュニケーションの質的障害(4項目),C. 行動,興味,活動の限局的,反復的,常同的パターン(4項目)〕に整理され,自閉性障害は12項目中少なくとも6項目(Aから2項目,B,Cから各1項目)を満たすことと,3歳までの症状発現が要件となった.そしてAsperger障害,Rett障害,小児期崩壊性障害が追加された.Asperger障害の診断基準として,Bのコミュニケーション領域の障害を必須要件からはずしたことは,後に臨床家や研究者から批判を受けることとなった.またDSM-IVのPDD-NOSの記述は,A or B or Cと誤って印刷されたため,ますます診断の拡大を招いた.DSM-IV-TR(2000)ではA and B or Cと訂正され,対人的領域の障116自閉症連続体,そしてAsperger症候群の発見DSM-III-R以降DSM-5以前:幼児期限定からライフコースへ

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