2537行為プロセス依存症の診断・治療と再発防止プログラム作成の手引き
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48②人は何にでも依存するわけではないa.依存物は快楽をもたらす ある物質を使用する,もしくはその行為をすることによって「快楽(快感,ハイになる,楽しい,ほっとする,安心するなど……)」を感じるものは,依存する可能性がある.一方で,それを使用すると,もしくはその行為をすることによって「不快」,もしくは「快楽も不快も感じないもの」は,依存する可能性がほとんどない. ただし,ある物質もしくは行為によって快楽を感じるか,不快に感じるかはかなり個人差がある.また当初は不快に感じていたものの,やっているうちに快楽を感じるというものもある(例:たばこなど).b.飽きるものや続けられないものには依存しない ある物質を使用する,もしくはその行為をすることによって,「快楽」を感じるものであっても,飽きてしまうものや続けられないものは依存する可能性はほとんどない.しかし,快楽を感じるもので,ほとんど毎日やっても飽きないもの,もしくは長く続けられるものは依存する可能性がある. ただし,覚醒剤や違法ドラッグのように,1~2回使用するだけであっという間に依存に至るものもある.③正の強化と負の強化 正の強化とは,楽しいから依存物や依存行為をやり続ける(依存症でなくても正の強化はある),端的に言うと,インターネットをすると気分がすっきりすることである.ある嗜癖行為(インターネットなど)をすると気分がよくなるので,それにのめり込むこと,気分がよくなるので,次々とインターネットをしたくなる,などである. 負の強化とは,依存物や依存活動をやり過ぎて依存症になると,依存物や依存行為を止めると不快になり,それらが止められなくなることである(依存症特有の症状).端的に言うと,ある嗜癖行為(インターネットなど)をしないと,気分が悪くなるので(イライラ・不安など),それを解消するために,インターネットを止められなくなることである. 正の強化と負の強化の説明として依存性物質による神経伝達物質受容体機構の変化仮説がある.それは以下のような仮説である. ヒトは快楽を脳で感じている.快楽を感じる神経系があって,神経と神経を

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