2537行為プロセス依存症の診断・治療と再発防止プログラム作成の手引き
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140はじめに 精神障害としての常習窃盗,「クレプトマニア(kleptomania)」は,古くからある概念である.しかしその研究は,精神医学のなかでも特に後おくれた分野であり,治療者も少ない.治療体験の蓄積が少ない結果,クレプトマニアの輪郭は曖昧なままで,その診断基準には混乱がみられる.アメリカの『精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Dis-orders, 5th Edition:DSM-5)』(2013)の邦訳(2014)にあたり,日本精神神経学会によって,クレプトマニアに対応する新しい和名,「窃盗症」が採用された1).これまで,窃盗症は比較的まれな疾患と考えられてきたが,近年,有病率の認識に変化があり,現在では,ギャンブル障害と比べられる程の高率の有病率が報告されている.また,女性は男性より多く,3:1とされている.クレプトマニア(窃盗症)の概説窃盗症の社会的背景①成人万引き犯の増加 かつて万引き事犯は,少年犯罪の代表とされてきた.ところが近年,わが国では,成人による万引き事犯の増加が社会問題になっている.この背景としては,対面販売からセルフ販売への移行とこれに対応する店舗構造の変化が挙げられる.目の前の棚に商品が溢れ,被害者の顔がみえない売場環境は,窃盗衝動がある人にとっては誘惑的である.一方で現在,万引き防止用AIカメラの導入が小売業界に広がりつつあり,今後の急速な機能向上が万引き事犯を抑制する可能性がある.11クレプトマニア(窃盗症)の診断・治療と再発防止プログラム第第4章章

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