2537行為プロセス依存症の診断・治療と再発防止プログラム作成の手引き
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145第4章 クレプトマニア(窃盗症)の診断・治療と再発防止プログラム後の経済的不安など,ライフサイクル上の危機が起こりがちである.この年齢層では,男性は退職などを契機にアルコール問題を,女性は家族問題を契機に抑うつ傾向や万引き癖を発症しやすい.症例報告【症例1】多重嗜癖の被虐待者(初診時20歳台,女性)【併存症】摂食障害,性依存,自傷癖,薬物依存症.【現病歴】患者は,初診直前まで,毎日トートバッグがいっぱいになるまで万引きをしていた.知人の勧めでAKHに入院した.初診時,摂食障害,性依存,自傷癖,自殺行為癖,ライターガス依存など,多彩な症状をもつ多重嗜癖の女性であった.半年間の入院中に,アルコール依存症の母親からの身体的虐待,義父からの性的虐待など幼児期のトラウマ体験が明らかになった.退院後も,通院治療を続け,ほぼすべての症状がなくなった.2021年現在,クリーン期間(窃盗行為のない期間)が15年に達した.6常習窃盗初診患者の性別・初診時年齢層別分布図2020406080100120140160180200220240260280300320340360(人)(歳台)1020304050607080男性女性

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