基本姿勢・・ 他項と同様,まずは体系的アプローチである.体系的アプローチの省略はありえない.・・ ウイルス性胃腸炎は症候学を省略することができない.「発熱」(p.52)または「下痢・腹痛・嘔吐」のいずれかを必ず経由する.・・ 下痢・腹痛・嘔吐は併せもつことが多い.「消化器3症状」として,まとめて考えてしまうのが実践的である.・・ 診断プロセスは「①下痢はあるか→②腹痛はあるか→③嘔吐はあるか」の順に思考するのが効率がよい.・・ 一方で緊急性の目安は「①腹痛はあるか→②嘔吐はあるか」の順となり,腹痛があれば基本的には緊急受診を勧め,下痢は受診の目安にはならない.・・ 「エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017 第Ⅰ部 小児急性胃腸炎診療ガイドライン」1)が基本的な型となる.・・ ただし,上記のガイドラインには「急性胃腸炎と診断した後の診療アルゴリズム」については記載されているが,「急性胃腸炎と診断する前」すなわち診断プロセスについての記載がない.・・ 自信をもって「ウイルス性胃腸炎」と診断するために,本書では次の診断アルゴリズム(図1)を提案する.・・ 第一印象が「不安定」だった場合,体系的アプローチにしたがって輸液が実施されているはずである.・・ 第一印象が「安定」だった場合でも,重症度項目(p.58)の評価は大切である.多呼吸や,皮膚ツルゴール低下,口腔粘膜の乾燥,毛細血管再充満時間(capillary rell time: CRT)3秒以上は,脱水の徴候である.血液検査と同時に輸液を開始する.・・ UpToDate®には,新生児では12時間以上,2歳未満では24時間以上,2歳以上では48時間以上,嘔吐が続く場合に血液検査をする下痢・腹痛・嘔吐492●Part B 症候学
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