2540小児科ですぐに戦えるホコとタテ
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できる,実践的な小児科マニュアルをつくりたい」と筆者は考えた.筆者は小児科医となって11年になるが,小児科専門医プログラムの「基幹病院」で働いたことがない.「連携施設」とも「二次救急医療機関」ともよばれる,比較的規模が小さい病院でずっと働き続けている.コモンなディジーズをバリバリとこなすのが筆者の仕事である.コモンなディジーズというのはなかなか奥深い.風邪の診断に自信をもてないのも,風邪の診断を過信してしまうのも,どちらも問題である.当然だが,コモンは風邪だけではない.適度な自信をもってコモンに向き合うには,ガイドラインを「型」とした型通りの診療をすることである.診療に「型」が備われば,自信は自然と湧く.つまり「実践的なマニュアル」とは,「ガイドラインを実際の医療現場に持ち込む方法」と同じことである.「型」であるガイドラインを臨床現場にうまく持ち込むコツは,逆説的であるのだが,ちょっと「型くずし」することにある.だが,「型くずし」にはガイドラインに対する深い理解と,現場の流れを見通す経験とが必要になる.ガイドラインを読みながら,コモンばかりを見続けてきた筆者の経験が,「型くずし」のコツとして役立つように思ったのだ. 「型くずし」をアドバイスできれば,「型」を現場に導入しやすくなり,結果的に型通りの(つまりガイドラインに準じた)診療ができるようになる.そう考えて,本書には「型くずし」のアドバイスを散りばめた.これは,ガイドラインを遵守するための「型くずし」である.当然だが,くずさなくていい状況では型通りに実践することが大切である.さらには,できるだけ実践的なマニュアルとなるように,小児科外来の基本的な姿勢から,症候学,各論までできるだけ広く書き尽くした.どうせなら,小児科専門医試験の症例要約にも使えるといい.多くの若手小児科医の最初の目標は,専門医になることだからだ.このマニュアル通りに診療し,それがそのまま症例要約に使えるのであれば,これほど実践的なことはないだろうと思ったのだ.あふれる気持ちがページ数からあふれてしまい,「続きはwebで」のようなスタイルにならざるをえなかった. 小児科専門医試験の「症例要約・指定疾患リスト」には10の区分と,約200の疾患がリストアップされている.小児科医が扱う多岐多様な疾患を前にして,あらためて思う.「小児科医は総合医である」と.この約200疾患のうち,筆者が経験したのは半分くらいだ.一応,認定小児科指導医をもっているにもかかわらず,筆者はまだ小児科のすiv●序文

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