2544糖尿病学2022
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70 糖尿病は特有の感染症の基礎疾患であり,肺炎などの重症化の危険因子である.大流行をきたしているCOVID‒19では,糖尿病は感染リスクを上昇させる明確な証拠はないものの,COVID‒19の重症化や死亡などの危険因子である.さらに入院前・入院時の高血糖がそれら重篤な転帰と相関することがわかっている.肥満もまた,COVID‒19感染,入院治療,重症化の危険因子であるが,BMI低値もまたそれら重篤な転帰の危険因子であり,いわゆるJ曲線効果が認められた. 感染症は,悪性新生物についで日本人糖尿病における死因の第2位17.0%を占めている.疫学的に,糖尿病では,骨・関節感染,肺炎,尿路感染,皮膚感染肺炎,尿路感染,皮膚感染などにより受診あるいは入院するリスクが高いことが知られている.糖尿病では,多核好中球の遊走能,接着能,貪食能,殺菌能が低下しており,特に血糖コントロールの不良な場合に感染症が遷延し,重症化しやすい1).市中肺炎で入院した患者の入院時の高血糖が入院中の併発症と死亡のリスクをともに上昇させるとの報告があり,糖尿病の診断がついていなくても入院時の高血糖は入院中の重篤な転帰と相関する.血糖コントロールが感染症リスクを軽減する可能性は高いがエビデンスはまだ不足している.DCCTにおいては強化療法群で膣感染症,足感染症のリスク軽減がみられた.また大規模なコホート研究でも良好な血糖コントロールが尿路感染症や抗生剤使用のリスクを軽減した.しかし血糖コントロールと感染症に関するアウトカムに関連をみなかった研究もある.高血糖に加えて,最小血管症や大血管症の合併による血流不全,自律神経障害による皮膚の乾燥や神経因性膀胱,胆囊の収縮異常,神経障害による疼痛閾値の低下,慢性腎不全による人工透析なども感染症の遷延・重症化に寄与する.糖尿病のコントロール悪化の一因となるアルコール多飲,肝硬変なども易感染性に関与する2). 呼吸器感染症としては,糖尿病患者では非糖尿病患者に比べて肺炎による入院が増えること,さらには高血糖であるほどその傾向は高まる.この研究では糖尿病の有無による原因微生物の頻度には有意差を認めなかったが,糖尿病はグラム陰性桿菌による市中肺炎や院内肺炎のリスクファクターであるという報告がある3). 糖尿病患者は,インフルエンザによる合併症はじめに糖尿病と感染症の一般論細菌性肺炎,ウイルスによる上気道感染・肺炎と糖尿病臨床研究・展開研究糖尿病,肥満とCOVID‒19感染症9大杉 満国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター

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