2547やさしい小児の眼科
13/14

第Ⅰ部●知っておきたい小児の眼の診かた・考えかた 1) 東 範行(編):小児眼科学.三輪書店,2015:28‒33,525‒531. 2) 村木早苗:わかる・できる・伝わる 先天赤緑色覚異常の診療ガイダンス.第1版.三輪書店,2017. 3) 市川一夫(編):色覚異常の診療ガイド.OCULISTA No. 43.全日本病院出版会,2016.認は少ないと考えられ,色に関する失敗の経験もない.それゆえ,程度が軽いほど自身の色覚異常を受け入れにくい.しかし,たとえ程度が軽くても,暗い所,疲れているとき,短時間での判断では色を誤認しやすくなるので注意が必要である.いずれにしろ自分は色を間違うかもしれないと自覚するようにアドバイスする. 小学校低学年以下の幼少期であれば,「2.幼少期の子どもへの接しかた」で述べたように,保護者への説明が主になる.本人は漠然とした不安を抱いていることがあるので心配しなくてよいと安心させる.小学校中学年以降になれば自分の色覚異常についてある程度理解できるので,自覚をもつなどのアドバイスが可能になる.中学生,高校生になればそれに加えて将来の進路を念頭に置いたアドバイスが必要になる.ただし,決して劣等感を抱かせないように配慮する必要がある.色覚はたくさんの能力の1つに過ぎないこと,誰でも苦手なことはあることなどを話す.職業もできることのほうが多いこと,できないものについては差別ではなく適性であることを説明する. 仕事は色に関することがどれだけ重要であるかを考えて決めるようにアドバイスする.雇入時健康診断における色覚検査は2001年に廃止された.ただし,色覚が必要な職業についてはその限りではない.色覚異常者に対する根拠なき制限はなくなったが,色覚検査があるということは色覚がその仕事にとって重要であるということの証でもある.色覚異常で遂行困難な場面があると思われる仕事は,染色業,塗装業など色彩を取り扱う仕事,信号灯の誤認が人命に関わる交通・運輸関係の仕事,警察官,調理師,美容師など色で判断する重要な場面が一部に含まれる仕事である.しかしどのような仕事でも色に関係ない部分があり,本人の熱意があればすべてをできないと決めつけることはできない.ただし,不断の緊張と努力を強いられることになるであろう.いずれにしろどのような仕事であっても色覚異常の自覚をもち工夫していく必要がある.16 色覚異常125参考図書(村木早苗)4.成長に伴うアドバイス5.職業選択における注意

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る