Ⅰ 色覚異常とは 網膜には光を感知する視細胞がある.視細胞には細胞の部分構造として視力や色覚を担う「錐体」と,明暗を担う「杆体」のいずれかをもち,これによって錐体細胞と杆体細胞の2種類に分けられる.錐体細胞は黄斑部を中心とした眼底の網膜後極部に多く分布し,杆体細胞は網膜中間部(後極と周辺の間の領域)に多く分布する.錐体には各波長の光に応じて反応する3種類の錐体,L‒錐体[long wavelength sensitive cone(長波長感受性錐体)],M‒錐体[middle wavelength sensitive cone(中波長感受性錐体)],S‒錐体[short wavelength sensitive cone(短波長感受性錐体)]がある. この3種の錐体の反応が組み合わさって,網膜に入った光は以下の3種の電気信号に変換される. ① L‒錐体とM‒錐体の反応の差から生じる赤と緑の感覚信号. ② S‒錐体とL‒/M‒錐体の反応の差から生じる青と黄の感覚信号. ③ L‒錐体とM‒錐体の反応の和から生じる色の明るさ信号. 網膜で変換されたこれら3種の電気信号は,視神経を経て外側膝状体,そして大脳に至り色として認知される.a.錐体欠損による分類 先天色覚異常は,3種類の錐体のいずれかの欠損により生じる.正常色覚は3種類の錐体をもつので「正常3色覚」というのに対して,1種の錐体を欠損している場合は「2色覚」という.2種の錐体が欠損している場合は「1色覚」という.ほとんどの先天色覚異常は1種類の錐体の欠損である.L‒錐体の欠損を「1型色覚」,M‒錐体の欠損を「2型色覚」,S‒錐体の欠損を「3型色覚」という.第Ⅰ部●知っておきたい小児の眼の診かた・考えかた● 色覚は網膜の3種類の錐体が担っている.● 先天色覚異常は錐体の欠損で生じ,先天赤緑色覚異常がほとんどを占める.● 仮性同色表で色覚異常の検出,色相配列検査で程度判定,アノマロスコープで型判定を行う.● 日常生活や職業を選択する際の注意点を助言するべきである.1201.色覚のメカニズム2.先天色覚異常はなぜ起こるのか?16色覚異常
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