12❺既往歴や原疾患 原疾患やその他の既往歴などの情報は,患者の状態を把握するうえで重要な情報となる.特に全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群,後天性免疫不全症候群,成人スチル病などの疾患を有する患者には薬疹が生じやすいことが知られている1).また,肝,腎機能障害,糖尿病,悪性腫瘍を有する患者では薬疹が重症化しやすい1). 薬疹のコンサルテーションに限った話ではないが,他科へコンサルトする際には,できるだけ疾患名や薬剤名の略語の使用は避けたほうがよい.コンサルトを受ける皮膚科医になじみのない略語を用いられることで,誤解が生まれる危険性がある.たとえば,糖尿病の略語はDM(diabetes mellitus)であるが,皮膚科医としては,DMという略語は皮膚筋炎(dermatomyositis)でなじみが深い.薬歴のまとめ方 ここでは薬歴のわかりやすいまとめ方を紹介する.薬歴をまとめる際には,もともと内服している薬剤(薬疹の被疑薬である可能性が低い薬剤),1〜2か月の間に開始した薬剤(薬疹の可能性がある薬剤)がわかるように記載する.新規開始薬に関しては,内服開始のタイミングをしっかり記載するようにする.造影剤は忘れがちになるが,重要な情報なのでしっかりと記載する.自施設以外の医院などからも処方薬がある場合,わかる範囲で記載する.後々詳細な薬歴を問い合わせたり,薬剤中止の依頼などをしたりすることがあるので,処方された医院の名称も記載されているとよい. では,具体的な薬歴のまとめ方を2つ紹介する(図1,2).図1では,薬剤を処方された施設ごとに,使用薬剤を列挙し,新規開始薬については,使用開始日を記載している.使用中止後も皮疹は遷延する可能性があるので,すでに中止した薬剤に関しても記載しておくとよい.図2では薬歴の時系列を図にまとめる方法である.多少手間がかかるという欠点はあるが,視覚的に薬歴を把握しやすいということは大きな利点である.薬歴以外にも皮疹の経過などを書き入れることもできる. 薬歴をまとめる作業は煩雑で手間のかかるものではあるが,薬疹の診断や治療にかかわる最も重要なポイントであるため,間違いのないように行う必要がある.薬歴を一番よく把握しているのは主治医であるため,皮膚科医が薬疹疑いの患者のコンサルテーションを受ける際に,薬歴を細かく 皮疹出現 2021/4/20(医療機関①) 薬剤A 数年前から内服 薬剤B 数年前から内服(医療機関②) 薬剤C 2021/4/1~(2021/4/21に中止) 薬剤D 2021/4/7~(2021/4/15に中止) 薬剤E 2021/4/10~ 薬剤F 2021/4/12~ 造影CT 2021/4/15図1薬歴のまとめ方(1)皮疹眼,口唇・口腔内,陰部の粘膜疹疼痛を伴う紅斑水疱,びらん四肢の紫斑顔面の浮腫,眼囲が抜ける紅斑膿疱全身症状発熱リンパ節腫脹肝機能障害腎機能障害呼吸困難表1重症薬疹を疑う所見
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