2555薬疹の上手な診かた・対応ガイド
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142D 患者背景別の薬疹の診かたと対応11アレルギー等の基礎疾患がある場合 本項では,薬疹との鑑別,薬疹の発症・治療に影響を及ぼす代表的な基礎疾患とその特徴と対応について概説する.NSAIDs過敏症が基礎疾患にある場合 非ステロイド抗炎症薬(non-steroidal anti-inammatory drugs:NSAIDs)で誘発される過敏症は大きく3つに分類される.1つ目は免疫学的機序を介した反応であり,IgEを介したⅠ型アレルギー反応やT細胞を介した遅延型の免疫反応を含むNSAIDsアレルギー.2つ目はすべてのシクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害薬に対して過敏反応を呈する,いわゆるNSAIDs不耐症.3つ目は食物依存性運動誘発アナフィラキシーに代表される食物アレルギーの誘因としてのNSAIDs反応である.本項では臨床的に鑑別・診断が重要であるNSAIDsアレルギーによる蕁麻疹型薬疹とNSAIDs不耐症の2つに焦点をあてていく.❶発症機序1)NSAIDsアレルギーによる蕁麻疹型薬疹 通常のIgEもしくはそれに類似した抗原抗体反応によって生じる反応である.すなわち,表面に IgE を結合した肥満細胞が抗原と反応することで,肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が遊離し,血管透過性を亢進させて浮腫を起こすとともに,おもに好酸球の遊走を誘導して炎症を惹起する.基本的に,1種類のNSAIDsのみに対するアレルギー反応となるが,化学構造が類似したNSAIDs間の交差反応が起こりうることには留意する.2)NSAIDs不耐症 発症機序として,アラキドン酸代謝経路における,おもにCOX-1阻害作用とその結果生じるリポキシゲナーゼ経路への過剰なシフトによって生じる薬理学的変調現象である.そのため,すべてのCOX-1阻害薬に対して用量依存性に過敏反応を呈し,感作なしに初回摂取時にも症状が誘発される1).❷特徴 NSAIDs投与後に蕁麻疹を認めた場合,臨床症状や皮疹の性状のみでNSAIDs不耐症か蕁麻疹型薬疹かを鑑別することは困難である.実際の各症例を示すが,病型間に皮疹の性状に大きな差は認めない(図1,2).診断には患者背景やNSAIDs使用歴などの詳細な問診が重要となる.1)NSAIDsアレルギーによる蕁麻疹型薬疹 過去に感作期間を必要とするため,問診から頻回の使用歴,特に直近での特定のNSAIDs継続使用歴を認められる.また,患者背景としてアトピー性素因があることに加え,頭痛や月経痛などの症状を有し,頻回にNSAIDsを使用する若年者に多いのも特徴である.誘発症状として,全身の蕁麻疹に加え血管浮腫,特にアナフィラキシーを呈する.図1の症例では,もともと頻回のロキソプロフェン使用歴があり,術後の疼痛コントロールのため,ロキソプロフェンの定時内服を開始したところ,全身に膨疹の出現を認めた(図1).その一方で,ロキソプロフェン以外のNSAIDsでは

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