筋力低下があれば,近位優位か遠位優位か判断する.近位優位が筋疾患パターン,遠位優位が末梢神経疾患パターンであるが,例外もある(表1‒42,表1‒43).4 診断のための検査 血清クレアチンキナーゼ(CK),筋電図,神経伝導検査で筋原性か神経原性か鑑別する. 筋CT/MRIは,罹患部位と進行程度を判断するのに有用である. 確定診断は,筋生検ないしは神経生検である.遺伝子診断可能な疾患を疑うときは,生検よりも遺伝子検査を優先させる(脊髄性筋萎縮症〈SMA〉,福山型先天性筋ジストロフィー〈FCMD〉,68I 症状から考えること,検査すること表1‒41 筋力低下を示す患者の診察ポイント 1 .視診 a . 顔面筋罹患と高口蓋:表情,特に泣き顔と笑顔(左右差は?).口蓋の形状と舌を観察 b .筋肥大と筋萎縮:必ず服を脱いで直接観察 c .筋線維束攣縮:四肢遠位部や舌に注目 2 .触診 a . 筋の固さ(consistency):必ず直接身体に触れる,痛みや熱感の有無も確認 b . 関節拘縮の有無:おもな関節の可動域(extensibility)を確認.制限あれば角度計測 早期からみられる関節可動域制限 ・福山型先天性筋ジストロフィー:手指の伸展制限 ・Ullrich型先天性筋ジストロフィー:近位関節拘縮 ・ Emery-Dreifuss型筋ジストロフィー:脊椎可動域制限,特に前屈制限 c .被動性(passivity):手関節・足関節を揺する d .ミオトニー:母指球や舌をハンマーなどで軽く叩打 e .深部腱反射:低下していることが多い.例外あり f .感覚検査:末梢神経疾患では深部知覚が低下しやすい 3 .動作指示 a .背臥位から立位へ:腹臥位を経るか,Gowers徴候が出るか b .歩行:つま先歩き,踵歩き,継ぎ足歩行など c . 跳ねる動作:ジャンプできるか,ソファーから飛び降りることができるか d . 徒手筋力テスト(協力してくれる場合):飽きないよう疲れさせないように手際よく
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