3 正常歩行からの変容 正常歩行から変容した場合,急性であれば急性小脳失調症・小脳炎,Guillain-Barré症候群,急性筋炎,関節炎などを考慮.亜急性であれば脳脊髄腫瘍,亜急性中枢神経系感染症,中枢神経系代謝・変性疾患,神経・筋疾患などを考慮(表1‒36).変動する場合は,重症筋無力症,不随意運動症(瀬川病,発作性失調症,Glut‒1異常症など),心因反応(転換障害)など考慮(表1‒37).〈佐々木征行〉6110 歩行障害I症状から考えること,検査すること表1‒35 歩容の異常 1. 脳性麻痺:痙性片麻痺では片麻痺歩行(麻痺側上肢は内転屈曲位,麻痺側下肢では内反尖足をとり,足を外側へ回して前方へ振り出す).痙性両麻痺・四肢麻痺では内反尖足位でつま先歩行,両下肢は交差しやすく鋏様. 2. 知的障害:つま先歩行あり(ASDでは高頻度).筋緊張低下が目立つこともある. 3. 末梢神経障害:遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSNあるいはCMT)では鶏歩(膝を高く上げ,足底をつま先から床面に落とす). 4. 筋疾患:Duchenne型筋ジストロフィーでは,動揺性歩行(骨盤を回しながら下肢を前方へ振り出し,上体を左右に振る).遠位型ミオパチーでは鶏歩. 5. 小脳疾患:失調性歩行(いわゆる千鳥足).負荷歩行(Tandem gaitなど)で症状顕著. 6. 脊髄疾患:Romberg徴候(立位開眼で安定,閉眼すると不安定),踵打ち歩行. 7. Rett症候群:左右に足間隔を広げ,ゆっくり前方へ出す.歩行失行と表現される. 8. Angelman症候群:不安定でぎくしゃくした歩き,あやつり人形様. 9. 不随意運動性疾患:舞踏病,アテトーゼ,ジストニアなどがあると頭部や体幹が捻転したり,四肢の動きが不規則になったりして歩行がスムーズにいかない.10. 整形外科的疾患:Perthes病などの股関節疾患のほかに膝関節や足関節などに痛みを伴う疾患では,かばうために逃避歩行(跛行)がみられる.痛みを訴えないこともあるので要注意.患側足の接地時間が短い.下肢長異なるだけでも上体揺れることあり.11.その他ASD;autism spectrum disorders.HMSN;hereditary motor and sensory neuropathy.CMT;Charcot-Marie-Tooth病.
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