62I 症状から考えること,検査すること表1‒36 正常歩容からの変容をきたす疾患1. 急性小脳失調症:失調性歩行.MRIで小脳に異常所見がみられることあり.先行感染確認.2. Guillain-Barré症候群:末梢神経の自己免疫疾患.日単位で悪化する.重症例では呼吸不全のため人工呼吸管理が必要.髄液検査(蛋白細胞乖離)と神経伝導検査(速度低下and/or振幅低下)が診断に重要だが,異常は発症1週間以後.免疫グロブリン大量療法.3. 急性筋炎:ウイルス感染症の一症状として現れることが多い.時に皮膚筋炎や多発筋炎の症状であることもある.4. 脳腫瘍:急性も亜急性もある.頭痛や嘔吐がみられないことあり.変動ありうる.5.脊髄腫瘍:疼痛や感覚障害を伴うこともある.変動ありうる.6. 亜急性硬化性全脳炎:性格変化,全身ミオクローヌスを伴いやすい.麻疹ウイルス抗体価が診断の決め手.7. 副腎白質ジストロフィー:5~8歳の男児でよくぶつかる,転ぶというときには必ず疑う.8.脊髄小脳変性症:家族歴が重要.孤発例では診断は慎重に.表1‒37 変動する歩容異常を呈する疾患1. 重症筋無力症:日内変動のある筋力低下.夕方症状悪化しやすい.外眼筋麻痺や眼瞼下垂を伴うことが多い.診断にはテンシロン(アンチレクス)試験と反復筋電図が重要.小児では抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体は上がらないことが多い.2. 多発性硬化症:視覚症状の有無.時間的・空間的多発性.頭部~脊髄MRIが重要.3.脳血管障害:急性発症.もやもや病では繰り返す.4.不随意運動性疾患:・ 瀬川病では,日内変動の有無が重要.夕方症状が強くなる.足が内転して動きにくくなる.・ 発作性運動誘発性ジスキネジア(PKD)では,思春期頃に,急に運動を始める(歩き始め,走り始めなど)とジストニアやコレアが出現して,しばらくの間(一過性に)運動がスムーズにできないことで気づかれる.・ 発作性失調症のうち比較的頻度の多いEA2では,幼児期より発作性に小脳性失調症を呈する.間欠時に眼振をみることもある.5. 心因反応:小学校高学年以上の年齢で起きやすい.神経学的矛盾所見(例:立たせると下肢に力が全く入らないため身体を支えられないのに,四つ這いで移動しベッドの上では下肢が動く)があるときは常に疑う.6.その他PKD:paroxysmal kinesigenic dyskinesia,EA:episodic ataxia
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