2556脳神経小児科診断・治療マニュアル 改訂第4版
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 診断には,脊髄MRIが必須検査となる.占拠性病変,形成異常,出血などを確認する.髄液検査も必要に応じて行う.3 両麻痺  四肢に麻痺があって,両下肢の麻痺が上肢よりずっと強い. 早期産児に多い脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomala-cia;PVL)では,痙性両麻痺が起きやすい.両下肢の筋緊張が亢進し,膝関節の伸展制限と足関節の内反尖足をみる.長坐位困難で,尖足.深部腱反射は下肢で亢進.視覚認知障害を伴いやすい.4 単麻痺  一肢だけに限局する麻痺.大脳運動野限局性病変~脊髄前角~末梢神経近位部の障害. 一肢を使わない場合,外傷,関節炎,腫瘍などによる痛みが原因のこともある.小児では肘内障が単麻痺の原因として多い.腕神経叢や腰神経叢の炎症や外傷でも単麻痺をみる. 単ニューロパチーは,骨折や麻酔後にみられることがある.肘の圧迫で尺骨神経麻痺,手根管の障害で正中神経麻痺がみられることもある.圧迫によって麻痺が生じやすい遺伝性末梢神経障害も知られている. 気管支喘息後に一肢麻痺をみるHopkins症候群や,ポリオウイルス以外のウイルス(エンテロウイルスD68など)による急性弛緩性脊髄炎もある.5 片麻痺  先天性(慢性非進行性),急性,緩徐進行性に分ける(表1‒40). 先天性片麻痺では,片側性大脳皮質形成異常(片側巨脳症,限局性皮質異形成など)と胎生期から周生期の脳梗塞・脳出血が大きな原因.麻痺自体は新生児期には判断できないことも多い.急性片麻痺では,脳血管障害が最も多い.緩徐進行性片麻痺をきたす場合,基底核部に原発する胚細胞腫(germinoma)は治療可能なので見落としてはならない.頭部MRI画像では腫瘤を認めないこともあり,時に患側大脳萎縮を呈す.6511 運動麻痺I症状から考えること,検査すること

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