2556脳神経小児科診断・治療マニュアル 改訂第4版
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2 乳児期以降の筋力低下  筋力低下だけを示すのは,基本的に下位運動ニューロン以下の障害による疾患である.脊髄前角細胞~前根~末梢神経(運動神経)~神経筋接合部~筋のいずれかに障害がある. 急性発症(急性筋炎,多発神経炎,Guillain-Barré症候群など),亜急性~慢性進行性(進行性筋ジストロフィー,遺伝性運動感覚性ニューロパチーなど),反復性(周期性四肢麻痺,代謝性ミオパチー,血管障害など)で鑑別.ほかに日内変動を呈す重症筋無力症もある.3 診察のしかた(表1‒41) 3‒1 視診 四肢をよくみる.筋肥大や筋萎縮の有無,筋線維束攣縮の有無を確認する.表情をみて,左右差含めた顔面筋罹患の有無を確認.開口して舌と口蓋も確認.3‒2 触診 四肢に直接触れて筋緊張を確認する.特定の疾患(福山型先天性筋ジストロフィー〈FCMD〉,Ullrich型先天性筋ジストロフィー,Emery Dreifuss型筋ジストロフィーなど)では早期より関節拘縮がみられるので診断の参考になる.筋強直性ジストロフィーではミオトニーが出やすいが,先天性ではあまり目立たない.深部腱反射は,多くの末梢神経疾患で低下する.先天性ミオパチーでも低下している.筋ジストロフィーでは,病初期には低下が認められないこともある.触覚,痛覚,深部覚も確認する.3‒3 動作指示 背臥位から一人で立ち上がってもらう.体幹屈筋が弱ければいったん腹臥位になってから立つ.登はん性起立(Gowers徴候:腰を先に挙げ,手を膝に当て,上体をゆっくりと挙げてくる)があれば腰帯筋の筋力低下を示す.立位の姿勢と歩行時の姿勢をよく観察する.踵歩きなどの負荷歩行は筋力低下部の推定に有効である.指示に従えれば徒手筋力テスト(manual muscle test;MMT)を行う.知的発達順調なら5歳くらいから可能である.指示に従えなければ,普段の動き方や採血時の抵抗のしかたなどから筋力を推定する.6712 筋力低下I症状から考えること,検査すること

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