2559遺伝性骨髄不全症診療ガイドライン2023
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D5貧血lackfaniamond︲Bる18).このため,30~40%の患者が持続的な反応を維持しながらステロイドを使用している.治療抵抗例では,同種造血細胞移植の適応がある18,23).DBAは,患者数も限られるため,無作為割付試験を含む前方視的治療研究は少なく,得られている情報は極めて乏しい.よって,わが国や海外に存在する疾患登録事業で得られたデータや文献をもとに専門家が作業を進め,わが国のDBAの患者に対し現時点で最も推奨される診療ガイドラインを作成した.② 診断基準以上より,DBAは,リボソームの機能不全を背景に,1)赤芽球癆,2)身体の先天異常,3)MDSや白血病への移行や固形がんの合併を特徴とする血液疾患として疾患概念が確立された.治療は赤血球輸血とステロイド療法が基本である.約60~80%の例は最初のステロイドに反応するが,時間の経過とともに,反応性を失うか,許容できない副作用のためにステロイドを中止せざるを得なくなることがあ典型例の臨床像としては,1)1歳未満の発症,2)他の2系の血球減少を認めない大球性貧血(あるいは正球性貧血),3)網赤血球減少,4)赤芽球前駆細胞の消失を伴う正形成骨髄所見を認め,5)身体の先天異常を伴う.しかし,その表現型は多様で,家族内に発端者と同一の遺伝子異常をもちながら貧血や身体の先天異常を伴わない軽症例も存在する.したがって,臨床像のみで本疾患を確定診断するのは不可能である.遺伝子変異が確認されれば診断は確定するが,約40%の患者では,原因遺伝子が同定されていない.本症が悪性疾患を合併しやすいことから,同種造血細胞移植のドナーを選択するうえで軽症例の診断は重要課題になっている.軽症例の診断も可能な診断基準案を表1に示す.なお,2022年に開催されたEuropean DBA (EuroDBA) consensus meetingにおいて,DBAの定義が示された.DBAの表現型は多様であり,既知の原因遺伝子の変異をもっていても貧血のない症例も存在する.このため,「DBA」という疾患名の代わりに「DBA症候群」と定義することになった.DBA症候群の原因遺伝子としては,リボソームの小サブユニットを構成するRPS遺伝子または大サブユニットを構成するRPL遺伝子またはそのシャペロンをコードする遺伝子(TSR2, HEATR3),および生物学的にDBAに関連す診断へのアプローチRPS19をコードする遺伝子であることを明らかにした4).RPS19遺伝子変異は約25%のDBA患者に認められるが,その後,RPS7, RPS10, RPS15A, RPS17, RPS20, RPS24,RPS26, RPS27, RPS28, RPS29, RPL5, RPL8,RPL9, RPL11, RPL15, RPL17, RPL18, RPL26, RPL27, RPL31, RPL35およびRPL35Aなどの遺伝子変異がDBAで発見された5︲13).RP遺伝子変異によるDBAはすべて常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の遺伝形式を呈するが,X連鎖の遺伝形式を示すDBAの症例に,RPS26のシャペロンTSR2や赤血球・巨核球系転写因子GATA1をコードする遺伝子の変異が同定されている14,15).また,RPL5の核への取り込みに関与するHEATR3の遺伝子変異が常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のDBA (4家系6名)で報告された16).欧米では約70%17︲19),わが国では約60%11,12,20)の患者で遺伝子変異が見出されている.これまで発見されたDBA遺伝子はTSR2, GATA1, HEATR3を除いてRPをコードしていることから,リボソームの機能障害によって生じる翻訳の異常が,本疾患の赤芽球造血障害の中心的なメカニズムであることが明らかになってきた21). DBAも他の遺伝性骨髄不全症と同様に,経過中に骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)や白血病などの血液腫瘍と大腸癌や骨肉腫などの固形がんを合併する頻度が高い22).II

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