2559遺伝性骨髄不全症診療ガイドライン2023
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I3本ガイドラインについてなく,一般の小児科医や内科医の日常診療にも役立つことを願っている.3.遺伝性造血不全症の診断,治療臨床所見が極めて多彩であるため,診断が困難なことがしばしばある.FAでは染色体断裂性試験(外注で可能)がスクリーニング検査として確立されている.また,DCではテロメア長の測定(名古屋大学小児科で解析可能)が,DBA では赤血球adenosine deaminase 活性や赤血球還元グルタチオンの測定(東京女子医科大学で解析可能)が有用と考えられている.しかし,その他の多くの遺伝性骨髄不全症候群には簡便な検査法がなく,診断は臨床診断に委ねられてきたが,他の遺伝性骨髄不全症候群,先天性溶血性貧血や後天性再生不良性貧血との鑑別は必ずしも容易ではなく,確定診断には遺伝子検査が必要である.ただし,DBAについては,臨床診断と遺伝子診断がほとんど一致しているため,弘前大学でDBA遺伝子パネルを用いて比較的迅速な遺伝子変異の同定が可能である.その他の疾患についても,名古屋大学小児科で遺伝性骨髄不全症の遺伝子パネルを用いて遺伝子変異を同定するという事業を行っている.治療法の選択については,一般に症例数が少ないためにランダム化比較試験による治療法の解析はほとんど行われていない.根治を期待できる有効な薬物療法は開発されておらず,造血細胞移植が骨髄不全に対する唯一の根治療法である.しかし,移植前処置の方法など多くの検討が必要である.4.利益相反本ガイドラインの作成には,製薬会社などの企業の資金は用いられておらず,特記すべき利益相反(conflict of interest : COI)はない.5.ガイドラインの検証と改訂本ガイドラインは,守らなくてはいけない規則ではなく,ガイドラインに従って治療が行われなかったとしても誤りではなく,治療方針の益と害を考慮し,個々の患者に応じた決定が重要である.遺伝性骨髄不全症候群は症例数が少なく,エビデンスレベルの高いガイドラインを示すにはまだ多くの問題があるため,現在推奨されているMindsの形式には沿っていない.また,この領域は,研究の進歩が日進月歩であるため,定期的に診療ガイドラインの改訂が必要である.

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