第2章各論疾患編▲10 不安障害 病因と病態 :病因は未解明だが,前頭前野機能と扁桃体機能の連携不全 好発年齢帯 :不安の内容(分類)によって好発年齢帯が異なる.社会生活をはじめると症状が目立ち,生活に支障が生じるケースが多い. 特 徴 :不安や緊張の症状が顕著な疾患であることから,性格が内向的,気が弱い,内気などと思われがちだが,多くのケースで,病前性格にこのような特徴はなく,快活で社交的であったというケースが少なくない. 症 状 :社会生活において,不安や恐怖を感じる必要がない場面で,不安・緊張・恐怖を感じ,その反応として動悸や発汗,ひどい場合には震えや動けない状態を呈する.が原因と考えられている.121患者への一般的な説明の適合力なども遺伝子の影響を受けることがわかってきたことからも「神経症」という分類自体が意味をもたなくなってしまいました.最新のDSMでは,主として「不安」症状を呈するメンタル不調の診断分類は,①不安症群,②強迫症および関連症群,③心的外傷およびストレス因関連障害群に細分化されています.この分類は,本来精神科臨床における保険医療の対象とはいえない心理学的アプローチが改善方法であるものや,そもそも疾病性より事例性に近いケースまでも包括して分類するような体系となっています.以前のような典型例でなければ分類せずに「その他」の分類(いわゆるゴミ箱)の診断となることを避け,すべてのメンタル不調を網羅するコンセプトで改変された点は理解できますが,“保険医療を行う精神科医”にとってはメリットが少なく,臨床経験が少ない医師にはかえって診断プロセスを複雑化させてしまった感があります.そこで,本章で説明する「不安障害」は,臨床症状・最終的な状態像だけに注目して細分化する広範囲の現代型メンタル不調の診断基準にとらわれず,生理学的,心理学的に純粋な「不安」が不調の基盤にある精神疾患を主眼として説明していきます.
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