2560向精神薬処方ストラテジー マスト&ベスト
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 治   療 :薬物療法,行動療法(段階的な曝露による脱感作),認知療法(不安・恐怖へのとらわれや過大評価などの異常な認知を是正).これら認知行動療法は個別で行うだけでなく,集団で実施することでピアカウンセリング機能も発現し,回復を助ける.疾病教育(疾病への理解を深める教育)が特に重要.患者は寛解期になっても予期不安の発生の予防として服薬を継続しようとし,それが完全寛解を妨げる.抗不安薬を使用する場合には極初期に頓服薬として限定して用いる必要がある.主として用いる薬剤はSSRIが推奨される.SSRIを6カ月~1年未満の期間投与することで,扁桃体や海馬のセロトニン神経系において後シナプスの5-HT2C受容体感度が低下し,症状発現の発端となる過活動が抑制されることで抗不安作用が発現すると考えられている.薬物療法による反応はよいが,服薬のみでの寛解率は20数%程度であり,認知行動療法の併用は必須である.不安症状を一度経験すると同一の環境や条件を忌避するようになり,次いで類似の環境や条件にも同じ反応を示すようになって生活範囲が限定されるようになる.なかには社会環境すべてを拒絶して引きこもってしまうケースもある. 経   過 :再発率は高い.認知行動療法が奏効しないケースでは慢性化する.122 a 扁桃体機能第2章 各論 疾患編脳神経学的・心理学的研究結果からの仮説と治療1(1) 不安障害の発症に関連性が高い脳部位の生理機能(図1)扁桃体は,側頭葉に位置し,大脳辺縁系を構成しています.部位として海馬と近接しており,海馬との連携した機能が存在するのは当然ですが,連携が強い神経ネットワークは,視床と前頭葉(前頭前野)です.感

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