2560向精神薬処方ストラテジー マスト&ベスト
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ii1990年代から米国が先導した生物学的精神医学が台頭し,2000年には精神科も脳科学の時代といわれた頃から,欧州を中心に体系化されてきた古典的精神医学は非科学的であり医学とはいえないという考えの波に押し流され,急激に精神医学の知識の分断が起こったという印象です.この分離問題を解消できないかと,数年前から講演や寄稿など事あるごとに生物学的精神医学と古典的精神医学の融合の重要性を発信してきました.統計的にはメンタル不調によって精神科を受診する患者数は年々増加し,約20年前と比較すると,「うつ系」のメンタル不調だけでも患者数は2.5倍となっていて,人口が密集する都市部では,メンタル不調となって受診しようとしても,予約待ちで数週間という状態にあり,精神科臨床的には医療崩壊に近いのが現状です.精神科の治療効果を上げるのに最も必要なことは,よい薬剤ではなく,診察に時間をかけて,しっかりと病状と情報をつかみ,的確な診断をすることなのですが,このように患者数が青天井で増加すれば,当然1人の患者にかけられる時間は減っていき,情報の未収集が生じることで診断の精度が低下するリスクがあります.さらに医療経済的にも,現在の皆保険制度内での診療では,患者の満足度を上げれば,医療機関が困窮するという構図にあり,標準的な診察時間内でいかに効率よく必要な情報を収集し,精度高く診察するかが重要となってきています.そのような背景も手伝って,「操作的診断」が臨床で多く用いられるようになったのでしょうが,近年に至っては,臨床医が個人的に改変省略した,アレンジされすぎた「操作的診断」によって,診断の信頼性が低下してきている事実があります.同じ患者を10人の精神科医が診ると10の診断が下されるなどと揶揄されるのはこのためです.「操作的診断」も,過去に積み上げられた精神臨床病理や伝統的診断の改良の上に築かれたものですから,これらを全く知らずに正しい「操作的診断」を体得するのは困難なのです.今回それらの内容を体系的にし,再編したものを執筆することが叶い,本書が刊行されました.すでに学問や研究の場から離れた一開業医が,これまで培った知識と技術をまとめたものではありますが,駆け出しの精神科臨床医にとっては「診療のいろは」,指導する立場となった精神科医にとっては総まとめとして有用となる発刊によせて

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