2560向精神薬処方ストラテジー マスト&ベスト
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第1章総論面接・診断と治療の流れ 23▲1 面接と情報の収集医療面接(1) 一般診療科目と精神科における予診・問診の違い医療関係者の多くは学生時代から,予診・問診を行うトレーニングを受けています.予診・問診とは,予備診察という意味ですから,疾病をある程度推測したうえで誘導をしながら,ある程度の目星をつけて患者への問いかけをするため,その答えはYes/Noとなるものが大半です.また,得られる情報は限定的かつ医療者の推測による誘導も含まれている可能性があり,それを診察の場で答え合わせのような形で進め,さらに検査によって確定診断に至るという形式の第一段階です.これに対して,精神科で扱う病態や症状は,誰もが一度は経験するような症状ではなく,求める情報としての回答がYes/Noで表せるものも少ないため,一般診療科目で行うような問診では十分な情報が得られないのです.(2) 正しい操作的診断の難しさそのような背景と再現性を重視した効率的な問診手法として,精神疾患ごとの特徴的な症状を統計的に分類し,標準化したチェック項目を用いて回答を得る方式,つまり操作的診断における診断基準というものが登場しました.現在の臨床現場ではこの操作的診断を用いた診断が主流となっていますが,正しい使い方をされていない印象です(正式な操作的診断では,該当項目を専門家が一般の人にも理解できるようにかみ砕いて,複数の表現で問いかけをする構造化面接の結果で該当項目の判断を下すことを前提としていますが,それを患者本人にセルフチェックのような用い方をして,即診断するという形式が行われている現状が多く見受けられます).正式な使用法でない操作的診断における診断基準だけが独り歩きすると,医療知識のない患者側には,自分の状態がそういうもの(症状)なの

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