この本は,プライマリ・ケア,非産婦人科医,メディカルスタッフの方に,診療現場で女性の健康を支援するお手伝いになればと思いつくりました.女性のヘルスケアやピルについて勉強を始めると,「女性ホルモンってむずかしい!!」と思う方が多いのではないでしょうか.女性ホルモンってむずかしい!!本当にそうです.実は産婦人科医である私自身も,「女性ホルモンってややこしい…」と毎日感じています.でも,ちょっと待ってください.患者である女性自身が,女性ホルモンのややこしさに1番困っているのです.そして低用量ピルやホルモン補充療法などの女性ホルモン剤を上手く使うことで女性患者さんの生活や仕事や学業のパフォーマンスが圧倒的に改善されることがあるんです.女性の体の中では,ホルモンの大きな変化によって毎月のように月経がきます.月経に伴って月経前症候群や月経困難症が起こったり,子宮筋腫や子宮内膜症を悪化させたりしています.妊娠すると女性ホルモンが急激に増加し,受精卵の着床と妊娠を維持する働きをします.出産直後に女性ホルモンが急激に低下すると,マタニティブルーズが起こったり,周産期うつ病の要因の1つになることがあります.更年期に入り,やっと月経がなくなる閉経のときも,女性ホルモンが低下する影響でホットフラッシュや骨粗鬆症などが起こります.このように,女性ホルモンに悩まされている患者さんはたくさんいます.女性ホルモンってむずかしい,ややこしい.でも,女性ホルモン剤を上手く使うことで女性の健康は大きく向上します.この本が,皆さまの日常診療においての女性の健康支援のお手伝いができれば幸いです.コロナが早く収束することを願いながら 2022年5月 淀川キリスト教病院産婦人科 柴田 綾子 序 文―女性ホルモンとピルってむずかしい!!
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