2572リウマチ・膠原病診療マスト&ベスト
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■1 関節痛・関節炎のアプローチ第2章診断編23active ROMができない場合にpassive ROMを行います.一方でactive ROMが問題なく全域できればpassive ROMをする必要はありません.一般的に,active ROMはできなくてpassive ROMができると,関節周囲(付着部,靱帯,腱,滑液包,筋肉,皮膚)の問題で,active ROMもpassive ROMもできない(痛みが増悪する)場合は,関節内の問題であることが多いとされます. c 触診 c 触診では関節の熱感・腫脹・圧痛の有無を確認します.圧痛の有無は,検者の爪が白くなるほどの圧力(4 kg/cm2)で圧迫する,または他動的に関節を動かしたときの疼痛で確認します.関節腫脹には,OAでみられる骨棘によるゴツゴツと硬く触れる「骨性腫脹」と,RAなど炎症性関節炎(滑膜炎)でみられる,増殖した滑膜や,関節液によるブヨブヨとした軟らかく,反発を伴う「滑膜性腫脹」があります.実臨床では,関節内と関節周囲のどちらにあるかわかりづらい症例や,関節内の病変と関節外の病変を合併する症例もあり(例:PMRの滑膜炎+滑液包炎,SpAの滑膜炎+腱付着部炎),関節内と関節周囲のどちらに疼痛の原因があるかを明確に区別することはむずかしいことがあります.4関節痛と関節炎関節痛と関節炎について考える際には,炎症の定義を確認する必要があります.炎症の五大徴候とは,熱感,発赤,腫脹,疼痛,機能障害です.炎症性関節炎でも発赤や熱感は乏しいことも多く,特に大切な徴候は,「腫脹」とされています.これは2010年に発表された,アメリカリウマチ学会/ヨーロッパリウマチ学会(ACR/EULAR)の「関節リウマチ分類基準」でも,その基準の適応は,1つ以上の「関節が腫れている」ことになっています1).関節痛は主観的(患者さんの訴える痛み),関節炎は客観的(客観的な関節腫脹)に判断されるという違いがあります.つまり,客観的に関節腫脹があると判断することが,関節炎があると同義となります. a 身体診察のあいまいさ a 関節腫脹が関節炎の診断に必要ですが,身体診察による関節腫脹の有無の判断は,実は非常に不確かなものであるとされています.もちろん経験を積んだリウマチ医の診察による関節腫脹の有無の判断は意味があるものですが,リウマチ医による「腫脹の有無」の一致率は7割にとどまったという報告があります2).これらの問題点を解決する手段としては,関節エコーやMRIといったモダリティを利用する方法があります.以下にそれぞれのメリットを示します.

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