慢性的に静脈圧が上昇した状態が続き,皮膚に色素沈着を残すうっ滞性皮膚炎をみたら,浮腫が診察時にひどくなかったとしても既往に心不全などがないか確認する.330おもな鑑別:心不全,腎不全,肝硬変,うっ滞性皮膚炎,血管炎第7章 複合的な原因によるむくみ心不全(僧帽弁閉鎖不全症,心房細動)で入院歴が複数回あり,現在は代償されている.軽度の浮腫と色素沈着は慢性的な静脈圧亢進に伴う変化と考えられる.両側下肢浮腫であり,心不全のほか腎不全,ネフローゼ症候群,肝硬変,甲状腺機能異常が鑑別となる.色素沈着はうっ滞性皮膚炎のほか,抗凝固療法に伴う紫斑,盛り上がりを伴う紫斑であれば血管炎や感染性心内膜炎も鑑別となる.うっ滞性皮膚炎の治療は原疾患の治療が基本であり,本患者では心不全のコントロールを維持することである.ただし,浮腫を完全になくそうとすれば血管内容量を低下させすぎて倦怠感や立ちくらみを引き起こしたり,血圧低下や腎前性腎不全といったリスクがある.ある程度の浮腫を許容すると,足が重く感じたり皮膚合併症(蜂窩織炎や皮膚潰瘍)のリスクが高まる.脚の挙上や弾性ストッキングなどは浮腫の軽減に有効である.皮膚の湿潤・清潔を保つ.pitfallまず考えること鑑別の流れ治療・経過診断慢性心不全・うっ滞性皮膚炎
元のページ ../index.html#14